終活コラム "大相続時代がやってくる"

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一気に顕在化する“老人社会

大相続時代がやってくる01

現在2025年問題がいろいろ議論となっています。2025年には団塊世代が75歳となり後期高齢者入りをすることで、いわば、“老人社会”が一気に顕在化するという象徴的意味合いが強いと思います。確かに、いろいろな問題が2025年には含まれていますが、75歳の老人は、まだまだ元気です。

従って、もっと問題となるのは、今から10年後、2028年問題の方がもっと大きいと考えられます。すなわち、団塊世代ほぼ全員が80歳あるいは80歳以上となる年です。団塊世代は、昭和22年から24年生まれを中心におよそ800万人という膨大な人口構成をなしていますが、この年代になると、死亡者や認知症患者も次々に発生することになります。

一説では、この時期は火葬場がたりなくなるとも言われています。

すなわち、2025年と2028年を比べると、問題の深刻さは2028年が深いといえます。まさに、「大相続時代」がやってくるのです。

相続税の観点からは、すでに「大相続時代」

一方、相続の観点からみると、「大相続時代」はすでにその時代がきております。

これは相続税の改正が平成25年に行われ、平成27年より施行されているためです。 この改正ポイントは多々ありますが、主な点としては、

  1. 基礎控除額の減額(5,000万円から3,000万円に引き下げられることで、申告が必要な人の割合が多くなる)、
  2. 税率の改正(2億円以上の税率を引き上げ。これにより富裕層の相続が増税となる)
  3. 税額控除の改正(20歳までの控除額、さらに障害者控除が従来より条件が良くなります)
  4. 小規模宅地の特例の改正(被相続人の居住用の土地について評価額を50~89%に減額できます)

この中で、大相続時代を招いた大きな要因が➀の基礎控除額の減額ということになります。

これまで、基礎控除は50百万円、さらに相続人一人あたり10百万円であったところが、

平成27年度よりは、基礎控除が30百万に引き下げられ、相続人一人当たりも6百万となりました。この改正により、相続税は、それまでは富裕層の話と思っていたところが、一般庶民の問題となって多くの人々が相続を考えなければならなくなった、すなわち「大相続時代」がすでに出現してしまっているのです。

これは、東京の都心に親の家がある場合、子供2人とすると、控除できる金額は、30百万円+6百万円×2名=42百万円ですから、坪150万円の親の家が30坪とすると、これで45百万円ですから、45百万円―42百万円=3百万円が相続価格となります。

これくらいの規模の親の家を東京にもっている人は一体どれくらいいるのでしょうか?

平成25年までは、富裕層の問題でしたが、平成27年からは、誰でも相続税を心配しなければならない時代に突入したということが出来るのです。「大相続時代」はすでにもう始まっているのです。

「大相続時代」を乗り切るには

では、この「大相続時代」を乗り切るにはどうするか?

これは、2028年を待たずして、一刻も早く対策を打ち出すことが必要です。

すなわち、相続税を軽減するには、時間をかけて、生前贈与による控除を受け、実際の相続金額を徐々に減らしていくことです。富裕層の中には、この相続を見据え30年間位かけて徐々に資産をうまく移動している方々がいます。

結局、相続税を軽減する決め手は「相続各種控除+生前贈与」ということになります。これが、相続税を軽減する大原則です。すなわち、亡くなった後からでは遅いのです。

しかしながら、なかなか将来の相続を考えて先読みし対策を立てている人々が少ないことも事実です。亡くなった後でもできる対策はないか?大原則の前にまずこのことを見ていきましょう。

亡くなった後でもできる軽減策
相続税の支払いは、亡くなってから10か月以内となっています。そこで、これから述べる方法は、この10か月以内に行うことがまず必要です。
主な方法は次の3つとなります。すなわち ➀ 遺産分割の方法、➁二次相続を考えた方法、➂土地の評価を考えた方法となります。それぞれを見ていきましょう。

➀遺産分割の方法
相続税は、相続人一人一人がいくら払うかという個別の計算から成り立っています。そこで、誰が、いくら相続するか、この内容で、相続税が軽減できることがあります。相続については、相続人の間で「遺産分割協議」をしなければなりませんが、この際に、「配偶者控除」をうまく活用する方法があります。

これは、配偶者が相続財産の1/2を相続するか、又は1億6千万円までの相続をした場合い、相続税がかかることなく相続できる制度の活用です。配偶者が1億6千万円までを相続し、子供の相続分を減らすことで、トータルの相続税が軽減できます。

➁二次相続を考えた方法
例えば、父が死亡した場合、母親と子供がまず相続をしますが、次に母親が亡くなった場合、子供が母親の分を相続、すなわち二次相続することになります。

この際、一次相続において、母親が配偶者控除で1億6千万円相続すると、この時の子どもの相続税は安くなりますが、二次相続の際、母親の1億6千万円が子供に降りかかってきます。こうなると、一次では軽減したが、二次で増加する事態となります。
従って、この二次相続を見据えながら、一次相続を決める必要があるのです。

➂土地の評価による方法
平成27年の改正により、小規模宅地の特例の改正(被相続人の居住用の土地について評価額を50~80%に減額できます)を活用します。これは故人の住んでいた自宅や事業を営んでいた敷地に関し、宅地の評価額を居住用や事業用では80%減に、貸付用については50%減にできるというものです。

相続税は「課税額×税率」ですが、税率は変化できないため、課税額を下げれば、税額を下げることができます。この方法は50%~80%まで土地評価を減額できるので、相続税軽減には大きな効果を発揮します。

「相続各種控除+生前贈与」による軽減策(これが軽減策の大原則です)

これには、税額控除と生前贈与という2種類があります。

➀税額控除
主なものは、イ)配偶者控除、ロ)贈与税額控除、ハ)相次相続控除、二)未成年者控除・障害者控除、ホ)小規模宅地特例改正等があります。

イ)配偶者控除
これは前項でみたように、配偶者であれば1億6千万円までの相続には税金がかかりません。

ロ)贈与税額控除
相続開始前3年以内に贈与した財産には、すでに課税されていますが、相続の際には既に支払った贈与税については、相続税から控除するという制度。

ハ)相次相続控除
自宅の土地建物などひとつの財産について、10年以内に、2回目の相続税がかかるときには、一定額を控除する制度。前項の二次相続などに適用されます。

二)未成年者控除・障害者控除
相続人が未成年者であった場合、あるいは障害者であった場合、控除額の条件が今回の改正で良くなりました。

ホ)小規模宅地特例改正
前項で述べましたが、この割合も今回の改正で条件が良くなりました。

➁生前贈与(主な控除についてみていきましょう。)

イ)一般贈与の基礎控除
これは、暦年課税と言われるもので、1年を区切りに110万円を毎年毎年贈与する方法です。1年間1名に110万円を贈与する場合には、贈与税が非課税となります。10年間贈与しつづければ、1100万円となり、これは相続財産を減らし、相続税も減ることとなります。

ロ)相続時精算課税制度
一般贈与が細かく分割されるのに対し、この制度は相続財産の前渡しといったもので、2500万円までの贈与には贈与税がかかりません。

また、2500万円を超えた金額にたいしては、20%の贈与税がかかりますが、この贈与税は、相続の際、相続税額から差し引かれ清算されます。

ハ)マイホーム贈与における配偶者控除
夫婦の間で2000万円までの贈与が控除されます。この制度の要件は婚姻 期間が20年以上の夫婦に限ることと、自分が住むための国内不動産を購入するためとなります。

二)教育資金の一括贈与
祖父母から孫、ひ孫と直系尊属から教育資金として1500万円までの贈与を非課税とするもので、贈与される側が30歳までとされています。

ここでご紹介した方法は代表的なものですが、実際には、更に詳細な様々な方法を組み合わせ相続税の軽減策が図られることとなります。

これについては、相続税のご専門の方々に相談いただくことをお奨めします。

相続税率も増税となっている

さて、ここで、相続税の税率と支払額についてみていくことにしましょう。

良く「相続税はおよそ20%くらいだ」なんて言われますが、この際ですから正確な税率と計算方法を覚えておきましょう。

平成27の改正施行で、2億円以上の税率の引き上げにより富裕層への増といわれていますが、税率については、以下のようになっております。

法定相続分に応ずる取得金額 相続税率 税金控除額
1000万円以下 10%
3000万円以下 15% 50万円
5000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1700万円
3億円以下 45% 2700万円
6億円以下 50% 4200万円
6億円超 55% 7200万円

この「法廷相続分に応ずる取得金額」については、詳しい計算方法がありますが、解りやすくいうならば、「基礎控除を超えた金額」ということができます。

そしてこの金額が相続税の支払い対象になりますが、その割合は以下のようになります。
ここで、よく誤解があるのは、基礎控除を超えた分が1500万円の場合、15%なので、相続税の支払いは250万円である、というのは間違です。

相続税の支払いは、相続が個人となるので、個人の支払う相続税の合計がその家でのトータルとなります。

例えば、母親と子供2人が父親の財産を相続する場合、基礎控除を超えた分が4000万円とすれば、まず母親の支払う相続税額=(4000÷2)×15%-50=250万円
子供A=(4000÷2÷2)×10%=100万円
子供B=(4000÷2÷2)×10%=100万円
この家庭の相続税額=250+100+100=450万円となります。

そして実際の税額については、個人個人に各種控除の分が適用されたのちの金額が「法廷相続分に応ずる取得金額」となり、これに税率をかけて計算することになります。
この場合、母親については法定相続1/2、あるいは1億6千万円ですから、相続税はかかりません。ぜひ、この計算誤解なきようにしてください。

あなたの相続税額はいくら?

では、実際あなたの場合の相続税額をざっと計算してみましょう。ここでは、国税庁がホームページで提供している「申告要否の簡易判定シート」なるものを使って相続税の計算のシミュレーションしてみましょう。

まず、条件ですが、亡くなったのは父親、相続財産1億円、相続人、母親+子供2人=計3名としてみます。

このシートは、実際の数値を記入できるようになっているので、すぐに結果を求められます。ここでは、この紙面で順にやってみましょう。

(1)法定相続人の数…配偶者1名、子供2名といれます。

すると、(A)基礎控除=3000万円+600万円×3名=4800万円と表示されます。

(2)相続財産および債務等の確認

  1. 土地、建物、有価証券、預貯金、現金など=1億円
  2. 生命保険金1500万円(ただし相続人1名当たり500万円まで非課税)=0円
  3. 生前贈与財産=0円
  4. 借入金、葬儀費用=借入金1000万円、葬儀費用200万円=1200万円

(B)課税価格の合計=88,000万円

(3)申告要否の簡易判定

(B)-(A)=4000万円

※結果は、各種控除が減額されていないため、かなり高額に算出されます。

これを個人の相続税率に置き換えると、

・母親=4000×1/2=2000万円×15%(税率)-50万円=250万円、

ただし配偶者控除の適用で0円

  • 子供a=4000×1/2×1/2=1000万円×10%=100万円
  • 子供b=4000×1/2×1/2=1000万円×10%=100万円
  • 実際に支払うこの家の相続税=200万円

但し各種控除、例えば小規模宅地特例を適用した場合、自宅+工場により宅地を評価すると80%減となります。

その結果、土地評価は1億円×0.2=2000万円。(B)課税価格=800万円となれば、相続税はほとんど無しでOKとなります。

相続税計算シート

相続税を不動産で支払うのはすでに時代遅れ

ところで、この相続税を人々はどのように支払っているのでしょうか?

ここに、相続税改正前と改正後の比較表があります。

改正前は不動産対金融資産の割合が51,1%:34.5%であったのが、H27以降は46.5% : 49%との比率が逆転してきています。

(単位:百万円)

おそらく、これは、不動産市場の動向に関係があるのではないかと考えられます。

人口減少により、目下我が国の不動産は逆風の中にいるといって良いでしょう。

湾岸タワーマンションなどについても、昨今不動産価格は頭打ちとなっており、価格下落からは逃れられると考えられていた各地特定地域なども今や例外ではなくなってきています。

相続税の支払いに、故郷の親の家を売れば良いとお考えになっている方、今、故郷の不動産はかなり厳しい状況にあります。

家を売るにも買い手がいない、 家の取り壊しにもそれなりのコストが かかる、家をそのままにしておくと維持費や固定資産税がかかる、まして空き家でほっておくと「空き家対策特別措置法」で固定資産税がいままでより高くなるなど、これからの故郷の親の家問題、これは待ったなしで今すぐにでもどのように処置するか?

対処を考えなければなりません。

まとめ

「大相続時代」を考える、このことは、今後のわが国の推移を見る上で非常に重要な概念であることが分かります。現在2025年問題が様々に論じられていますが、もっと考えなければならないのは、10年後の2028年ではないかと思います。この年になると団塊世代は次々に亡くなり、団塊ジュニアも定年世代に突入します。

すなわち、今後10年後の世界は、今までとは全く違う世界が出現します。

その意味では、この10年間、私たちは何をすべきか。これによって10年後の世界が決まるといっても過言ではないでしょう。

「相続」・「事業承継」は、世代交代を意味します。いかにこの世代交代をスムーズに行うか、これが「大相続時代」を迎える私たちが今問われている大きな課題ということができるでしょう。

コラム筆者:一般社団法人 問題解決型コンサルタント協会
代表理事 倉林 敏

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