年々増え続ける改葬。その主な理由や、改葬先として選ばれる墓所やかかる費用についてご紹介します。
改葬手続き
改葬とは?
改葬とは、納骨、埋葬した遺骨を、他のお墓に移すことをいいます。改葬の件数は年々増加傾向にあり、厚生労働省の調べによると2016年で約88,000件という結果になりました。
改装にあたっては「墓埋法」の規定により、市区町村役場の許可が必要です。手順は以下をご参考にしてください。
改葬の手順
①移転先の新しいお墓の準備 |
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②古い墓地の管理者に説明・承諾を得る |
※承諾を得た後は、古い墓地がある市区町村役場で、「改葬許可申請書」「埋葬証明書」など、改葬のための必要書類を受け取り古い墓地の管理者に署名押印してもらいます。 |
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③改葬許可書の発行 |
※古いお墓があった、市区町村役場に②の書類を提出すると発行される。 |
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④遺骨の取り出し・古い墓地の撤去 |
※宗教により「魂抜き」などの儀式が行われる。 |
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⑤新設した墓地に納骨 |
※新設した墓地管理者に改葬許可書を提出して「開眼法要」など、宗教ごとに儀式を行います。 |
改葬が増える理由
多くに人がなぜ改葬を選択するのか、その理由をいくつか挙げてみたいと思います。
①田舎にあった墓地を現住所の近くに移す
田舎から出て都会で生活する人が増え、それに伴いお墓を移動させるケースも増えています。例えば、実家で暮らしていた両親を、近くに呼ぶ、同居する、また、両親が亡くなってしまったなど、田舎に帰る機会が亡くなった時をきっかけに行われることが多いようです。
②墓じまいとして永代供養墓に改葬する
お墓を管理継承できる人がいない、または、子供や孫にお墓で面倒をかけたくない、という理由から、現在の墓地を片付けて、お墓の管理が不要な永代供養墓に改葬する人が増えています。
③夫婦両家のお墓を一緒にする
夫婦それぞれがひとりっ子である場合など、両家の先祖を一緒に埋葬するために、各家の墓地を片付けて、新たに「両家墓」を建造するケースがあります。
④お墓参りが困難な場所にある
地域によっては、山の中や村はずれなど、辺境な場所に墓地があり、お墓参りが困難な場合もあります。高齢で墓地までいけない、墓地の管理ができない、という理由で、管理が簡単な霊園や納骨堂に改葬する場合もあります。
他にも、改葬の理由は様々ありますが、高齢化、少子化、各家族化、過疎化など、現代の世相を反映して改葬が増加しているようです。
改葬許可書とは?
「改葬許可書」とは、その名前の通り、改葬の手続きを行うために必要な書類のことを言います。これについて少し詳しく見ていきましょう。
改葬許可書の定義とは
改葬許可書とは、「現在安置されている場所から、ほかの場所に遺骨(やご遺体)を移す際に、必要になる書類」のことを言います。この書類がなければ、改葬を行うことはできません。この際には、現在遺骨が納められているところの管理者から、証明書をもらわなければなりません。
その後で、市町村に対して、改葬許可申請書を出します。それが認められると、この「改葬許可書」を受け取ることができます。これを携えて、新しい埋葬先の管理者の元に向かいます。
改葬許可書と火葬許可書の違い
改葬許可書としばしば混同されやすいのが、「火葬許可書(死体火葬許可書とも)」です。この火葬許可書は、改葬許可書とはまったく異なるものです。火葬許可書は、その名前の通り、ご遺体を火葬するための許可証を言います。これをもらわなければ、ご遺体を荼毘に伏すことができません。
また、この火葬許可書の交付には、死亡診断書(死亡届)が必要になります。火葬許可書は、改葬許可書よりもずっと前の段階、亡くなってから1週間以内に手続きを行わなければならないものなのです。
改葬許可申請書の書き方
改葬を行うために必要なのが、「改葬許可書」です。そして、この改葬許可書をもらうためには、「改葬許可申請書」が必要です。
これの書き方について見ていきましょう。
改葬許可申請書の提出先とは
改葬許可申請書の提出先は、「今現在、お骨(ご遺体)を納めているところを管轄している市町村」です。新しく埋葬したいと考えているところの市町村ではないことに注意してください。
また、提出先も、この市町村役場です。ただ、実際にはそのときには、「現在埋葬されているところの管理者の証明書」と、「次に移るところの管理者の証明書」の2通もあわせて必要になります。
長崎市の事例で見る改葬許可申請書の書き方
さて、ここからは、改葬許可申請書の書き方について見ていきましょう。
- 死亡者の本籍
- 死亡者の住所(亡くなった当時のもの)
- 氏名、死亡した日
- 火葬した日
- 死亡者と申請者の続柄
- 現在の埋葬箇所
- 改葬することにした理由
- 新しく納める場所
などが問われます。また、お墓に複数のお骨がある場合、「それが何人分あるのか」ということを記載する必要も出てきます。「詳しくはわからない」という場合は、「不詳」とすることができる欄もあります。まずは完成させて、役所に持っていきましょう。
改葬マナー
「死」「弔い」に関する場面では、特に「マナー」が問われます。それについて見ていきましょう。
改葬に立ち会うときの服装は?
改葬の場合、「葬儀」とは異なります。このため、服装については、喪服でなくても構いません。男性ならばダークスーツを着用するとよいでしょう。女性の場合もこれに準じ、地味なワンピースやスーツを選びます。
アクセサリーは基本的には用いません。結婚指輪くらいがよいでしょう。それでも、ということでしたら、真珠の一連のネックレスを付けます。なお、真珠のネックレスは、「つけなければいけないもの」ではなく、「つけるのならばこれを」というものです。メイクは簡素に。ただし、ある程度の年齢になっているのならば、ノーメイクというわけにはいきません。落ち着いた、華美ではないメイクをしていきましょう。
改葬後のマナー
改葬した後には、一般的に、参加した人と一緒に食事をすることになるでしょう。引き出物も付けるようにします。ただ、現在では、「大げさなことをしたくない」という意見もあり、これを省略するケースもあります。また、その後に、「ここに改葬をした」というお知らせを各方面に出してください。「改葬の際には招かなかったけれど、お墓参りに来てくれていた」という人もいるからです。
挨拶状の手配は、実際の改葬日よりも前に行っておくと失敗がありません。
お渡しするお布施は、地域や寺院ごとに多少変わりますが、1万円~5万円程度が相場でしょう。なお、このときには、表書きに「お布施」と書くのが通例です。この際は、白の無地の袋に入れるのがもっとも安全です。
改葬のお布施について
ここまでも何度か「改葬の金額」について取り上げていますが、ここで改めて取り上げることにしましょう。
金額はいくらくらいか?
改葬にかかるお布施の金額は、明確な決まりがあるわけではありません。ただ、一般的には、10000円~50000円程度と考えられています。迷ったのなら、少し多めに包むか、もしくは葬儀の際にお世話になった葬儀会社に意見を求めるとよいでしょう。
なお、改葬の場合、1段階目として、まずはお墓を閉じる際の閉眼供養のためのお布施が必要となります。その後に、新しいお墓に入れた時にもう一度お布施をお渡しすることになります。加えて、「改葬を期に、檀家を辞める」という場合は、離檀費用が発生するケースもあります。
お布施をお渡しする際の表書き
お布施はどのようにお渡しすればいいのか、と悩む人もいるでしょう。人によっては、不祝儀袋に入れるのでは? と思うのではないでしょうか。しかしお布施は、それ自体が、「不幸」にあたるものではありません。このため、不祝儀袋を用いるのは間違いです。
基本的には白い袋を用意し、それに入れます。郵便番号欄が印刷されているものは避け、真っ白いものを選びます。表書きは「お布施」「閉眼(開眼)供養料」とするのがよいでしょう。
改葬先の選択肢と費用について
現在の墓地から新しい墓地を改葬するにあたって考えられる納骨スタイルとして、主に、従来のお墓、永代供養墓、納骨堂があげられます。それぞれの特徴と費用についてご紹介します。
①従来のお墓
一般的なお墓を建てるのに必要な費用は、全国的に約200万円が平均相場といわれています。その費用の内訳は「永代使用料+墓石代(彫刻・工事費含む)+管理料(年毎)」となっています。
永代使用料 | 永代使用料とは墓地・霊園の使用料です。お墓は、土地ではなく使用権を購入するものなので使用料とされます。永代という言葉とおり、子孫代々使用していくことができますが、継承者がいない、毎年の管理料が支払われないといった場合には、しかるべき手続きの後取り壊され、遺骨は合祀されることもありえます。永代使用料は、30~200万円と費用の幅が広く、公営か民営かといった違い、地価(地域、立地場所、交通アクセス)区画の広さなどによって変動します。 |
墓石代 | 墓石にかかる費用としては、石代、彫刻加工費、工事費などがあり、合計して100万円程度が全国平均といわれています。 |
管理費 | お墓の維持、管理費として、年間で5,000円~20,000円程度必要です。 |
②永代供養墓
永代供養墓とは、墓地や霊園が遺族に代わって供養してくれる墓地です。
「永代供養」は、従来のお墓に必要な「永代使用料」とは全く異なるもので、承継者や年間の管理料は必要なく、はじめの支払いのみで、墓地や霊園が存続する限り永遠に供養してくれるものです。承継者が不要なこと、管理が不要なこと、費用が安価なことなどから、墓じまい後の改葬先として多くの人に選ばれています。
永代供養の費用相場は、10~150万円程度で、埋葬方法や、納められる遺骨の数、占有スペース、個別供養年数など、様々な条件によって大幅に異なります。
・合祀(合同埋葬)墓
他の遺骨と合同埋葬する形式の墓地です。お墓参りは、モニュメントや供養塔などを墓標として共用のお参りスペースで行われます。一度合祀されると、個人の遺骨を取り出すことはできませんが、管理が不要なこと、供養の費用が安価であることから多くの人に選ばれています。費用の目安は10~30万円です。
・個別埋葬墓
個別の永代供養墓としては、通常のお墓と変わらない独立タイプの墓地と、個別納骨はできるが階段型など集団で納められるタイプの墓地があります。費用は、独立墓地の場合は60~150万円、集団で納骨される場合は30~80万円程度、必要です。
ただし、個別埋葬といっても、十七回忌や三十三回忌などある程度の年数が経つと合祀されるケースもありますので注意が必要です。
③納骨堂
納骨堂は天気に左右されず掃除も簡単にできるため人気です。
納骨堂は、霊廟(仏壇)型、ロッカー型、コンピュータ制御型など様々なタイプがありますが、いずれも十七回忌や三十三回忌などある程度の年数を経過すると合祀されるのが主流です。費用相場は20~130万円程度で、個別納骨年数や、占有スペースの広さなどで上下します。