エンディングノートの書き方と家族が困らないように書いておきたいこと

エンディングノート(終活ノート)の書き方に、決まりはありません。家族や友人へのメッセージを残したり、生前の希望(介護や医療についてなど)を書いたりと、内容は自由で書ける項目から書くことがポイントです。
しかし、エンディングノートに必要な情報が書かれていなかったり、独りよがりな要求ばかりを書いてしまったりすると、家族を困らせてしまう可能性があります。エンディングノートは、自分と家族のために書くものです。

残された大切な家族や友人を困らせないように、必要な情報を書いておくのもエンディングノートと終活の大切な役割です。
今回は、エンディングノートの書き方と、家族が困らないように書いておきたいことを詳しくご解説します。

エンディングノートの書き方で家族が困らない書き方

エンディングノートの書き方と家族が困らないように書いておきたいこと01

エンディングノートは“終活ノート”とも呼ばれ、終活の中の核とも言うべき存在です。エンディングノートは、自分の死後や認知症・突然の事故などで自分の意志が伝えられなくなった時、家族が困らないようにするために書き残しておきます。

また、これまでの人生を振り返るきっかけにもなり、懐かしい友人に連絡をしてみたり、挑戦できていなかったことを思い出し実行してみたり、と今後の人生を前向きに歩むスタートにもなります。自分の過去、現在の意志、残された未来を同時に考えることができる良いチャンスです。

エンディングノートに書く内容は自由です。

何を書いても良いのですが、内容は大きく分けると2つあります。

残された家族が困らないようにするための情報

自分の歴史や家族へのメッセージなど思い伝える内容

の2つです。

もちろん、両方書いても、片方だけ書いても構いません。

いきなりエンディングノートを書こうと思っても、何から始めれば良いかわからない人は、書く項目が印刷されている市販のエンディングノートを使ってみましょう。葬儀社のホームページでは、無料でエンディングノートの冊子をプレゼントしているところもあります。

印刷してあるものでなくても良い人は、大学ノートやパソコンの中で文書作成する方法もあります。

書く時のポイントは、書きやすい内容から書くことです。
すぐに書くことができない情報や自分の気持ちを確かめてから書きたい場合は空欄にして、後で書けば何の問題もありません。

また、“今はこう思っている”という気持ちを書いておくことも大切です。今回書いた内容があなたの最後の意志で変更ができないもの、ではありません。人の考えは変わることがあって当たり前です。変わったら、変わった時に、また書き直せば良いのです。そのように気楽に考えて書いてみましょう。

さらに、該当しない項目には、“なし”とはっきり明記することも大切です。空欄のままにしておくと、書き忘れなのか該当しないのかがわかりません。

終活サポート専任

講師からアドバイス
エンディングノートは、家族が後で見ることが前提なので、「綺麗な字で書かないと」と身構えてしまい、書けなくなる方も少なくありません。そんな時は、全頁コピーを取って、「下書き」だと思って書き始めると、気軽に書くことができます。「下書き」だから間違っても、気が変わっても、またコピーを取って書き直せばOK。 自分の銀行口座、支店名など、「今は見られたくないけど、もしもの時にすぐ必要になる」という情報は、書いた上から、マスキングテープを貼っておくと、ノートを見た人が必要な時にはがして確認することができます。 口座番号は、遺族が問い合わせると教えてくれますので、記載する必要はありません。資産情報は、本人しか把握していないことが多いので、持っている銀行、証券口座をすべて書き出してみましょう。もう使っていない口座の見直しもできますし、自分の備忘録としても重宝します。

自分や身の回りのこと

自分や身の回りのこと

自分について

・名前
・生年月日
・住所、本籍地
・血液型

個人情報、契約しているもの

・運転免許証、健康保険証、
・パスポート、マイナンバー
・住民票コード:所有の有無
・年金:公的年金
・私的年金の有無、種類(企業年金、個人年金、など)
・携帯電話:(所有の有無、契約会社名、契約者名、支払い方法) 
・加入している保険:保険の種類(生命保険、共済、など)
・保険会社、契約者名
・水道、ガス、電気:契約会社、契約者名、支払い方法

ペット

・ペット飼育の有無
・名前、年齢、ペットの種類
・ペット保険:保険加入の有無
・かかりつけ医:病院名など
・エサ:普段食べているエサ、好きなエサ
・自分の死後、どのようにしてほしいか
家族の誰かに飼ってほしい、施設に預けてほしい
里親を探すNPO法人に預けてほしい、など

自分について
こちらの項目は家族もおよそ把握している内容ですが、念のため書いておきましょう。本籍地は現在の住所・実家・思い出の場所など本人が自由に設定できるので、意外と知られていないかもしれません。

個人情報、契約しているもの
家族と離れて暮らしている場合、意外と知らないのが身の回りのことです。

自分の死後、あなたが契約していたものや健康保険証などは家族が返還や利用停止の手続きを行います。家族が困らないようにパスワードや保管場所について詳細に書きたいところですが、エンディングノートを紛失した時や盗難に遭った時、パスワードや保管場所が書かれていると不正利用される恐れがあります。紛失・盗難された時のことを考えて、その存在を示す程度の内容にとどめた方が良いでしょう。

ペット
ペットは自分の死後も必ず誰かのお世話が必要になります。死後はどうして欲しいのかを考えましょう。家族に飼ってもらえれば良いのですが、住んでいる場所や状況によっては飼うことができないこともあります。その場合、残された家族は困ってしまいます。あなたが大事にしていたペットを手放す時に心苦しく感じるはずです。しかし、あなた本人が施設に預けてほしいなどと書き残していた場合、“本人の希望なのだから”と少しは気持ちが軽くなることもあるのです。

連絡先

・親族:名前、自分との関係性(兄の子供、実母の妹、など)、住所、電話番号
・訃報を知らせたい人:名前、住所、電話番号  
(※葬儀に呼んでほしい人の項目も後であります)

会う機会があまりない親族については、家族もよくわかっていないことが多いです。親の兄弟・姉妹までの名前はわかっていても、そのパートナーや子供の名前まで完璧に言える人は少ないでしょう。わかる範囲でできるだけ詳しく書いておきましょう。親族に直接名前を聞くことは失礼なので、あなたのノートが役に立つはずです。 訃報を知らせたい人には、住んでいる場所が遠いなどの理由で葬儀には呼ばないけれど、後で訃報の知らせを届けたい人を書きます。

終活サポート専任

講師からアドバイス
自分の本籍は、自分でも把握していない人もいます。亡くなった後、相続の際に必ず戸籍謄本が必要になりますので、現在の本籍だけでなく、本籍を移動したことがある場合は、過去の本籍も書きましょう。もし以前の本籍が分からない場合は、見当がつく範囲で(父の本籍地、出生時の住所、引っ越しした場所など)書いておくと、家族が戸籍謄本を取り寄せる際とても助かります。 一人暮らしでペットを飼っている人は、必ずペットの種類と名前を書いてください。 知らない人が入ってくると隠れて出てこないペットもいますので、名前を呼べば何か反応があるかもかもしれません。自分のご葬儀に呼んで欲しい方がいるなら、その方の連絡先を書いておきましょう。書くのが面倒な場合は、年賀状や連絡先リストのコピーをノートと一緒に保管してもOKです。

葬儀やお墓のこと

葬儀やお墓のこと

葬儀

・希望する葬儀の規模:
家族葬、一般葬、火葬のみ、など
・葬儀に呼んでほしい人:
名前、住所、連絡先、間柄(親族、友人、など)
・納棺の際に一緒に入れてほしい物
・遺影写真:所有の有無、保管場所

お墓

・菩提寺:菩提寺の有無、名称、宗派、住所、連絡先
・契約しているお墓
・納骨堂:契約しているお墓
・納骨堂の有無、名称、住所
(契約書類の保管場所)
・菩提寺や契約しているお墓
・納骨堂がない場合:希望する納骨形式
(一般墓、集合墓、納骨堂、自然葬・樹木葬、散骨、など)
希望する納骨場所(寺院や墓地の名称、住所)

葬儀
生きている間に自分の葬儀について家族に話しておくことのできる人はごく少数です。特に葬儀の規模に関しては、葬儀社が薦めた通りの内容やご遺族側ができるだけ良いものをと選んだ結果、本人が望まない規模になることがあるため、しっかりと記入しましょう。

葬儀に呼んでほしい人は、家族が亡くなった人の交友関係を知らない場合に大変助かるものです。亡くなってから葬儀まではあまり日数がないため、できるだけ早く相手にも連絡をしなくてはなりません。誰を呼んでほしいのか、連絡先は知っているのか、この二つに家族は頭を悩ませてしまいます。葬儀に来てほしい人をリストアップした時は、知っている連絡先が現在でも通じるか確認してみましょう。久しく聞いていなかった親しい人の声を聞くことができるかもしれません。

また、遺影写真は亡くなってから葬儀までに準備しなければならないため、家族が慌てて探した結果、あまり良い表情ではない写真になることもあります。最近、終活の一つとして遺影写真を生前に撮影したり、使って欲しい写真を選んでおいたりする人が増えています。自分の納得のいくお顔の遺影写真を準備した際は、忘れずに保管場所も書き示しておきましょう。

お墓
契約しているお墓・納骨堂がある場合は、忘れずに書いておきましょう。自分の死後、家族がそのことを知らずに別の場所に納骨してしまうかもしれません。既に契約したお墓・納骨堂のほとんどが既に料金を支払っているものです。自分の選んだ場所に納骨されないばかりか、お金ももったいないことになります。納骨の際に必要な契約書は大切なものなので、できれば保管場所を書かずに、家族に話しておきましょう。

菩提寺や契約しているお墓・納骨堂がない場合は、希望する納骨形式を書いておくことも大切です。昔は先祖代々のお墓と集合墓という選択しかありませんでしたが、現在はお墓を持たない納骨もたくさんあります。納骨場所が決まっていない人は、これを機にお墓探しをしてみるのも良いでしょう。

終活サポート専任

講師からアドバイス
亡くなった後、非常に混乱している中で最初に必要になるのが、遺影です。年を取ってくると、積極的に写真を撮ることを嫌がる方も多いので、遺影にする写真を探すのに、家族は大変苦労します。遺影撮影会などで写真を撮っておくのもいいですし、お気に入りの表情の写真があれば、ノートにはさんでおくと、家族は大変助かります。生前見積をしている方は、「生前見積していることを知らずに他の葬儀社で葬儀をしてしまう」という様なことがないように、葬儀社と担当者名を書くだけでなく、必ず家族に事前に伝えておいてください。葬儀の際、宗派は必ず聞かれますので、書いておきましょう。 お墓を申し込む場合は、自分の希望だけで先走りせず、管理する家族の事も考えて探しましょう。様々なスタイルのお墓があるので、自分で決められなくても、自分が見学したところを書いておくと、家族がお墓を決める時の参考になります。

相続財産やお金、遺言のこと

相続財産やお金、遺言のこと

相続財産

・預貯金:銀行名
・有価証券:有価証券の有無、証券会社名
・貸金庫:貸金庫の有無
・クレジットカード:カード名称、引き落とし先
・不動産:不動産の有無、住所、名義、用途(自宅、別荘、投資用、など)

遺言書

・遺言書の有無
・保管場所
・種類(自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言)
・作成を相談した専門家の名前、連絡先

相続財産
相続財産の内容全体で注意したいのが、エンディングノートを紛失・盗難した時のことを考えて書くことです。印鑑・通帳・重要書類の保管場所や暗証番号、クレジットカード番号は書かないでください。不正利用される恐れがあります。 “○○銀行の口座を持っている”など、その存在がわかれば大丈夫です。

暗証番号等がわからなくても、家族であれば様々な方法で手続きをすることができます。 有価証券の中でもネット証券は郵便物がありません。所有している場合、存在を書き忘れると家族が気付かないこともあります。忘れずに書きましょう。

預貯金やクレジットカードの欄を記入する際、使っていない口座やクレジットカードはありませんでしたか? 使っていない口座・クレジットカードは早めに解約しておくと家族に負担をかけず、また、防犯対策にもなります。

さらに、数が多いと思ったら、使い勝手の良い口座・クレジットカードを選んでまとめてしまうこともおすすめです。暗証番号を忘れる心配がなくなり、お財布もすっきりするので一石二鳥です。

借りているもの

・借金:借金の有無、借入先名、返済方法、担保の有無
・保証債務(借金の保証人など):保証債務の有無 借金については誰にも知られたくないものです。ですが、借金をしている場合は正直に書きましょう。その理由は、借金も相続の対象になるからです。つまり、借金の支払い義務が残された家族に生じるということです。しかし、亡くなってから3ヶ月以内であれば相続放棄ができます。自分の借金の肩代わりで家族が苦しまないよう、正直に書きましょう。

貸しているもの

・お金を貸している人:名前、連絡先、金額

終活サポート専任

講師からアドバイス
最近では、通帳のない銀行も増えているので、パソコンやスマホの中にしか口座情報がない場合があります。パソコンやスマホをパスワードでロックしている場合、資産情報を確認することができないので、必ずパスワードを書いた紙をどこに保管しているか家族に伝えてください。 ノートにパスワードを書くと漏洩した時に被害が出るので、パスワードを書いた紙を保管した場所のヒントをノートに残すことをお勧めします。遺言書を書いている場合は、書いていることを家族に伝えておきましょう。遺言書の内容が極端に偏ったものにならないように気を付けて作成し、家での保管が不安な場合は、法務局で保管してもらうこともできますので、保管場所をノートに書いておきましょう。

遺言書
遺言書は相続財産の配分の方法を指示し、かつ、法的な効力があります。一方、エンディングノートには法的な効力はありません。相続財産の分配を自分の考えで行いたいという人は、エンディングノートに記載せず遺言書を残しましょう。

医療や介護のこと

医療や介護のこと

医療

・アレルギー:アレルギーの有無、アレルギーの内容(そば、卵、乳、など)
・持病:持病の有無、かかりつけ医の病院名、住所、先生の名前、連絡先
・常備薬
・命に関わる病気の場合、病名の告知を希望するか
・延命治療を希望するか
・臓器提供を希望するか

介護

・介護をお願いしたい人(配偶者、介護ヘルパー、息子夫婦、など)
・希望する介護場所(施設で暮らす、自宅介護、など)
・施設を希望する場合、希望する介護施設名

医療
医療の内容は突然の事故などで意識不明・重体になった時に大切な内容です。特に、延命治療と臓器提供に関する意思表示は大切です。意志表示がない場合、家族は気が動転している中、重い決断をしなければならないからです。また、家族で意見がまとまるとも限りません。命や体に関しては“本人が望むようにしてあげること”が本人にも、家族にも納得できることなのです。

介護
認知症などで判断能力が低下してしまった場合の介護に関することです。

終活サポート専任

講師からアドバイス
自分に介護が必要になった時、できる限り自宅で介護を受けたいのか、施設に入所したいのか、希望があれば書いておきましょう。自分が動ける状態であれば、入所前に、家族と一緒に希望する施設を見学しましょう。介護施設が終の棲家となることもあるので、看取りまでできるのかも確認しておくと、安心して過ごせます。もし自分が認知症や意識不明になった場合、延命治療を希望するかどうかを、家族と一緒に話しあって、その気持ちをノートに書いておくと、もしもの時、家族が判断を下す際の大きな助けとなります。 離れて暮らす身内が、後から文句を言ってくることがあるので、自分の意思を書面に残しておくと、判断をした家族を守ることにもなります。面倒がらずに気持ちを残しておきましょう。

エンディングノート書き方についてまとめ

今回ご紹介した項目を全て書くだけでも、一日で終わらないことがほとんどだと思います。

根を詰めて書くよりも、数日に分けてじっくりと考えて書いても構いません。そして、時間をかけて完成させたエンディングノートの存在と保管場所を家族に話しておきましょう。
家族が困らないようにと一所懸命に書いたエンディングノートも、活用されなければ水の泡になってしまいます。

そして、エンディングノートを書いたことによって、これからの生活・人生が前向きになるような小さな変化や気付きがあった方は、それを大切にしましょう。これから、また新しい人生が始まります。

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【監修】池原充子(終活専門相談員)

池原充子

これまでの略歴

身元保証 課程修了
エンディングノート講師 課程修了
遺言作成講師 課程修了
認知症サポーター 課程修了

兵庫県尼崎市出身
京都外国語大学中国語学科卒

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