親からの住宅の生前贈与について

親からの住宅購入資金の贈与が非課税になる住宅取得資金の特例とは?

親からの住宅の生前贈与について01

「住宅取得資金の贈与の特例」とは、親などから住宅購入資金を贈与した場合、一定額まで非課税で受け取れる制度をいいます。

対象者

住宅取得資金贈与の特例が適用できるのは、贈与の相手が以下3つの要件全てを満たす必要があります。

・贈与者の直系卑属であること
・贈与する年の1月1日時点で20歳以上であること
・合計所得金額が2,000万円以下であること

贈与者の直系卑属であること

直系卑属とは、子や孫など、血族関係にある者を指します。親から子へはもちろん、他の要件を満たせば、祖父から孫への贈与も可能です。ただし、子の配偶者など血族関係が無い者は該当しません。

養子はどうなる?

養子は、例外的に直系卑属となります。もし子の配偶者などにこの制度をどうしても適用したい場合は、養子縁組を検討するとよいでしょう。

贈与する年の1月1日時点で20歳以上であること

贈与する相手の年齡は、贈与する年の開始時点で20歳以上であることが要件になります。これは、未成年者への贈与を認めると、相続税・贈与税の課税逃れのためにこの特例を濫用されるおそれがあるからです。

合計所得金額が2,000万円以下であること

贈与する相手の合計所得金額は、2,000万円以下であることが要件です。

住宅取得資金の贈与の特例の目的は、消費が活発な若い世代に円滑に資産を移し、消費行動を促進することも含まれています。

したがって、合計所得金額が2,000万円を超える経済的に余裕のある人が、さらなる資産をもつための制度としては利用できません。

対象となる住宅とは

対象となる住宅は、新築だけでなく中古住宅の取得費用、増改築の費用も対象です。

新築または中古住宅の場合の主な要件は、

・床面積が50㎡以上240㎡以下の範囲であること
・その家の2分の1以上が受贈者の居住に使用されていること
・中古住宅の場合は制限以内の築年数であること(最大25年以内の建築物に限定)

等になります。また増改築には、その工事費用が100万円以上などの要件があります。

非課税限度額はいくら?

非課税限度額は、

・住宅を購入した年度
・住宅を購入した時の消費税率
・住宅の性能(省エネ住宅か否か) の3つで上限額が変化します。

省エネ住宅とは、

・断熱等性能等級4若しくは一次エネルギー消費量等級4以上であること
・耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)2以上若しくは免震建築物であること
・高齢者等配慮対策等級(専用部分)3以上であること

のいずれかに適合する家屋であることが「住宅性能証明書」等でわかるものをいいます。

さて消費税率が平成31年10月から10%に増税されることに伴い、非課税限度額は今後下記のように変動することが決定しています。(平成29年4月1日現在の法令による)

住宅の取得等に係る契約の締結日 省エネ住宅 左記以外の住宅
平成28年1月1日~平成31年9月30日 1,200万円 700万円
平成31年10月1日~平成32年3月31日 3,000万円 2,500万円
平成32年4月1日~平成33年3月31日 1,500万円 1,000万円
平成33年4月1日~平成33年12月31日 1,200万円 700万円

消費増税直後は限度額が大幅に上がる

住宅の購入にあたって不利と考えられている消費税増税ですが、上記の表からわかるとおり、住宅取得資金贈与の特例では、消費税増税直後の非課税限度額は大幅にアップすることが予定されています。

仮に、税抜き販売価格3,000万円の省エネ住宅を購入する子に対し、3,000万円を贈与したいとしましょう。

増税前に購入した場合、子の負担額はまず消費税の240万円。

そして非課税限度額は1,200万円ですから、3,000万円から1,200万円を差し引いた1,800万円にかかる贈与税額になります。

1,800万円の贈与税は、基礎控除額110万円を差し引いても495万5,000円です。

したがってこのケースでは、増税前に贈与した場合、子の負担額は合計735万5,000円にもなります。

一方、増税後に同条件で贈与を受けた場合、贈与額3,000万円は全て非課税です。

したがって、子の負担額は消費税の300万円で済みます。

住宅購入費は高額になったはずなのに、贈与税が絡むと増税後の方が出費が少ないという不思議な例です。ただし、平成32年度から増税後の非課税限度額は大幅に下がるため、計画的に利用しましょう。

住宅取得資金贈与の特例を活用するメリット

相続財産を減額できる

相続税は、相続財産の合計額が基礎控除額以下であれば、相続税はかかりません。

基礎控除額は、3,000万円+600万円×法定相続人の数で計算されます。

したがって、相続財産が基礎控除額を超えることが生前にわかっている場合は、住宅取得資金の贈与の特例を利用して相続財産を基礎控除額以下にすることで、相続税を0円まで引き下げることも可能です。

相続時精算課税制度との併用も可能

贈与税のかからない制度には、相続時精算課税制度もあります。

相続時精算課税とは、2,500万円までの贈与については課税せず、相続時に生前贈与分を相続財産に加算して精算する制度です。

この制度の良いところは、住宅取得資金贈与で非課税限度額を超える部分に対し、この制度を適用できることです。

住宅取得資金贈与の特例と相続時精算課税制度を併用すれば、多くの場合、無税で住宅取得資金を受け取ることができるでしょう。

ただし相続時精算課税制度は、単に納税の先延ばしに過ぎないため、非課税の制度である住宅資金贈与とは根本的に異なります。

もし贈与したい相手に住宅の購入予定がある場合は、まずは住宅取得資金贈与の特例を優先して適用しましょう。

適用時の注意点

「家屋」を取得するための「資金」であること

住宅取得資金の贈与の特例は、「家屋」を取得(増改築)するための「資金」を贈与した場合に限られます。

そのため、親が売買契約をした家屋を子どもに譲る場合や土地の購入費用の場合は、この制度を適用することはできません。

贈与方法は、親名義の口座から子名義の口座に振り込むなど、あくまで「資金」の贈与であることを明確にする必要があります。

非課税額はあらかじめ確認しておく

住宅取得資金の贈与額をいくらにするかは、非課税額を基準にする場合が多いでしょう。もし省エネ住宅の非課税限度額を利用する場合は、あらかじめ販売業者に、この制度の適用基準を満たしているかしっかり確認しておく必要があります。

省エネ住宅の非課税限度額を利用する場合は、住宅性能証明書等を贈与税の申告書に添付しなければならないため、こうした証明書の発行手続きも確認しておきましょう。

贈与の翌年3月15日までに居住する

住宅取得資金贈与の特例を適用するには、贈与された資金を翌年3月15日までに住宅の購入費等に充てること、そして同日までに居住することが要件です。

もし3月15日までに居住できない時は、その後遅滞なく居住の用に供する見込みである場合に限り適用を受けられる場合があります。

まとめ

適用は専門家に依頼することがおすすめ
資金を受け取った受贈者が、住宅取得資金贈与の特例を適用するためには 贈与税が0円であったとしても贈与税の申告が必要です。

申告には、申告書のほか
・マイナンバーと本人が確認できる書類
・戸籍謄本(親子関係を証明するため)
・登記事項証明書
・売買契約書の写し
・省エネ住宅であることを証明するもの

など一定の書類を添付して、納税地の所轄税務署に提出する必要があります。また、贈与は双方の承諾の上で成立する契約です。

口頭であっても契約の効力は生じるのですが、贈与税の申告を行う以上、贈与契約が成立していることを後に証明できるよう、親子であっても贈与契約書を作成しておきましょう。

資金の贈与を行った日(振込日など)より前の日付で契約書を作成しておくこと、双方が原本を1通ずつ保管しておくことがポイントです。

住宅取得資金贈与の適用に関する相談は、税務申告の専門家に行うことをおすすめします。

終活全般相談窓口メールでのご相談
終活全般相談窓口メールでのご相談
▲この記事をシェア

【監修】池原充子(終活専門相談員)

池原充子

これまでの略歴

身元保証 課程修了
エンディングノート講師 課程修了
遺言作成講師 課程修了
認知症サポーター 課程修了

兵庫県尼崎市出身
京都外国語大学中国語学科卒

相続に関連する記事

←「終活コラム一覧」に戻る
会員登録・ログイン
終活相談窓口 いい葬儀お客様センター
電話で相談する メールで相談する LINEで相談する 会員ログイン