株式相続の手続きは複雑で困っている方が少なくありません。そのような方に向けて、株式の相続の手続き方法や相続税などについてご紹介します。
株式の相続手続き・手順・相続税を詳しく解説!
株式の相続手続きの流れを解説
まず株式の相続手続きの流れを簡単にご紹介します。
- 遺言書の有無と内容を確認する
- 相続人と相続財産を調べる
- 準確定申告の必要があるか調べ、必要なら申告する
- 遺産分割協議を行ったあと遺産分割協議書を作成する
- 株式の名義を変更する
- 相続税を納付する
相続した株式を売却した場合には、所得税と住民税、特別復興所得税を納付する必要があります。 以下、それぞれの内容について詳しくご説明します。
株式の相続は相続人と相続財産を把握すること
株式の相続を行うには、譲り受ける相続人と相続する全ての財産を把握する必要があります。
相続人は配偶者と血族相続人に分けられます
相続人は、調べなくてもわかっているケースが多いですが、戸籍を調べると認知した子供がいたことがわかることもあります。のちにトラブルが発生しないようにするために、全ての相続人をしっかり把握しなければいけません。
相続人は、夫や妻である配偶者と子供や兄弟などの血族相続人に分けられます。配偶者には婚姻届けを提出していない内縁関係は含まれませんが、血族相続人には血のつながりはなくても養親子関係は含まれます。
相続財産を調べることでプラス財産とマイナス財産か把握する
株式の相続に全ての財産を調べる必要はないと思われる方もいるかもしれませんが、全ての財産を調べないとプラス財産とマイナス財産が把握できません。
マイナス財産の方が多い場合は、相続人の中で相続放棄する方が出てくる可能性もあり得ます。
相続財産を全て把握したら相続人に知らせて、相続を承認するか放棄するかを決めてもらいましょう。相続を承認した場合は、プラスの財産だけでなくマイナスの財産も相続することになるため注意してください。
相続株式の調査は上場株式と非上場株式で異なる
上場株式とは証券取引所で取引され多くの人が取得することができる株式で、非上場株式とは証券取引所では取引されていない株式です。
株式調査は上場株式と非上場株式で異なります。
上場株式は取引していた証券会社に問い合わせる
被相続人が亡くなったことを取引していた証券会社に連絡し、残高証明書の発行を依頼します。残高証明書には、被相続人が死亡した時点の保有銘柄や数量、時価が記載されています。
残高証明書の発行に必要となる書類は、被相続人の死亡が確認できる書類(戸籍謄本や死亡証明書など)、相続人の本人確認書類(印鑑証明書、運転免許証など)、被相続人と依頼者との関係が確認できる書類(戸籍謄本など)です。
非上場株式は株券発行会社に問い合わせる
非上場株式は、自身や親族が会社を経営していた場合などに保有している可能性があります。お心当たりの方は、株式発行会社に問い合わせてください。
非上場株式の評価は、以下の3つの方法があるので簡単にご説明します。
- 類似業種比重方式:上場している同業他社の平均株価に純資産や利益、配当金の比重割合を乗ずることで評価する方法。
- 純資産価額方式:純資産と発行株式数で1株当たりの価格を求める方法。
- 配当還元方式:配当金から1株当たりの価格を求める方法。
非上場株式の評価は普通のひとには難しいケースが多いため、弁護士や会計士、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
非上場株式の評価について詳しく知りたい方は、国税庁のホームページをご覧ください。
出典:国税庁ホームページ:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hyoka/4638.htm
準確定申告は4ヶ月以内に行わないといけない
被相続人にも納税義務がありますが、亡くなってしまったため自分で確定申告を行うことはできません。そのため、相続人が代わりに確定申告を行います。それを準確定申告といいます。
準確定申告は相続人全員で行わなければいけませんが、相続人が連署した必要書類を代表者が税務署に提出できます。
準確定申告の期間は「相続の開始があったことを知った日から4ヶ月以内」と定められています。一般的には、被相続人が亡くなった日から4ヶ月以内です。その期間内に準確定申告を行わなかった場合は、加算税や延滞税や刑事罰に問われる可能性もあるので注意してください。
準確定申告を行わなくてもよい場合
必ず準確定申告を行わなければいけないということではなく、行わなくてもよい場合もあるのです。簡単にまとめると以下のようになります。
- 被相続人が年収2000万円以下の給与所得者かつ副収入が20万円以下
- 被相続人が年400万円以下の年金受給者かつ副収入が20万円以下
準確定申告を行わなくてよい場合でも、準確定申告を行えば還付金を受け取れるケースもあるため、相続税のことと合わせて専門家である税理士に相談することをおすすめします。
遺言書に相続人の記載がない場合は遺産分割協議が必要
遺言書に株式の相続方法まで記載されていたら、その内容に従い相続が行われます。しかし、遺言書がないもしくは、遺言書があっても株式の相続方法についての記載がない場合は、遺産分配協議が必要になります。
遺産分割協議とは?
遺産の相続は、民法により相続割合が決められていますが、分配されるまで株式や不動産などは全相続人の共有状態となっています。
そのため、相続人全員で話し合いをして、遺産の分配について決めなければいけません。それを遺産分割協議といいます。
全相続人の合意があれば、民法で定められている割合などに縛られることなく自由に相続割合を決めることができます。
株式の遺産分割方法は株式のまま相続するか売却して分配する
株式を相続する方法は、大きく分けると2つあります。
ひとつは、相続人が株式をそのまま受け継ぐことです。この場合は、株式を相続人で分けてそれぞれ名義変更するケース、ひとりの相続人がすべての株式を受け継ぎ他の相続人は株式以外の遺産を相続するケースなどがあります。
もうひとつは、全ての株式を売却して売却代金を相続人で分配する方法です。株式や不動産などの分割しにくい相続財産は、この方法で分配されることもあります。
遺産分割協議書を作成する
遺産分配協議で決まった内容を書面にまとめたものを遺産分割協議書といいます。必ず作成しなければいけないわけではありませんが、あとで揉めることを避けるためや名義変更をスムーズにすすめるために、作成しておいた方がよいでしょう。
遺産分割協議書の書式はありませんが、相続人全員の押印が必要です。また、公正証書にしておけば公証役場に原本が保管されるため、紛失や偽造といったトラブルを避けることができます。
上場株式の名義変更は証券会社に口座を開設する必要がある
遺産分割協議などで分配方法が決まったら、株式の名義変更をします。上場株式の場合は、証券会社に相続人名義の口座を開設して、証券会社に指定された書類を提出すれば株式の名義変更は完了します。非上場株式の名義変更は、株式発行会社に問い合わせてください。
株式の名義変更に期限はありませんが、出来るだけ早めに名義変更することをおすすめします。
株式の名義変更に必要な書類
提出する書類は証券会社によって少し違いがありますが、一般的には以下のような書類が必要となります。
- 遺言書(公正証書遺言以外は検認証明書の写しも必要)もしくは遺産分割協議書
- 被相続人が亡くなったことを証明できる書類(戸籍謄本、除籍謄本、死亡証明書など)
- 相続人全員の戸籍謄本、印鑑証明書
- 証券会社が指定する届出書
- 株券
株式の名義変更に必要な書類は、必ず証券会社に確認しながら用意しましょう。
相続税の納付は相続開始後10か月以内に行わなければいけない
相続税は「相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内」に被相続人が住んでいた住所を管轄する税務署に納付しなければいけません。
相続税は各相続人が申請書を提出してもよいですが、一般的には全相続人が共同して申請書を作成し、連署して代表者が提出します。
相続税は「配偶者の税率の軽減」や「小規模宅地等の特例」などもあるので、一般の方だけで処理するのは難しいでしょう。特に、非上場株式を相続した方は株式を評価する方法が複雑なため、専門家に相談することをおすすめします。
相続総額が基礎控除額以下の場合は相続税を支払わなくてもよい
相続した財産が基礎控除を超える場合は相続税を支払わなくてはいけません。相続した財産は株式だけにはなく相続した財産全ての合計になります。
基礎控除額は、3,000万円+600万円×相続人の数です。
例えば相続人が5人いた場合、基礎控除額は3,000万円+600万円×5=6,000万円です。
遺産総額が1億円あった場合の課税遺産総額は1億円-6,000万円=4,000万円になります。
相続税の税率は?
相続税は課税遺産相続総額によって税率と控除額が決まっています。速算表にまとめておくので確認してください。
法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000万円以下 | 10% | ― |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
株式の相続は、手続きや評価が複雑で難しく感じる方は少なくないはずです。また、実際の遺産相続では、株式だけではなく不動産や預貯金などさまざまな遺産についての手続きもしなければいけません。
大切な方が亡くなり精神的なダメージを受けているときに、相続手続きがスムーズに進まないと、より一層精神的な負担が大きくなってしまうでしょう。 それを避けるためにも、各種手続きは弁護士、相続税に関係することは税理士などの専門家に代行依頼することをおすすめします。
【株式の相続手続き・手順・相続税を詳しく解説!のまとめ】
株式の相続手続きは、遺言書の有無と相続人、相続財産を調べて必要なら準確定申告をしなければいけません。
次に、遺言書がなければ遺産分割協議を行ったあと、証券会社に名義変更を依頼する必要があります。また、相続した財産の金額によっては相続税を納付しなければいけません。
株式の相続の複雑な手続きはひとりで行うのは難しいため、弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。
さらに「株式がどこに保管されているかわからない」「色々なところに財産があって、探したものが全財産かどうかわからない」という時は、相続の窓口へご相談ください!
【監修】池原充子(終活専門相談員)
これまでの略歴
身元保証 課程修了
エンディングノート講師 課程修了
遺言作成講師 課程修了
認知症サポーター 課程修了
兵庫県尼崎市出身
京都外国語大学中国語学科卒
これまでの略歴
身元保証 課程修了
エンディングノート講師 課程修了
遺言作成講師 課程修了
認知症サポーター 課程修了
兵庫県尼崎市出身
京都外国語大学中国語学科卒
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