親名義の家を相続することになった場合に必要な手続きや発生する税金の種類、相続以外の対応方法、親名義の家を相続する際の注意点などを解説します。
親名義の家の相続することになったら|手続き・相続税・固定資産税などを徹底解説
親名義の家を相続したらどうすればいい?
親名義の家の相続はわかりづらいことが多く、沢山の方が悩まれています。
今回は、親名義の家を相続するにあたって、多くの方から寄せられる
・親名義の家を相続したらどうすればいい?
・親名義の家を相続したら相続税がかかるの?
・親名義の家の固定資産税って相続人が払うの?
・そもそも親名義の家は相続するしかないの? という身近な疑問を解消していきたいと思います。
親名義の家を相続することが決まったら、その家の名義を、被相続人(亡くなられた親)から相続した人に変更する手続きを行います。
この名義変更は、必ず行わなければならない決まりではないのですが、こうしないと家の処分ができません。 また、放っておくと相続人全員の共同名義として扱われ、さらにその中で相続が発生すると、権利がますます複雑化して手がつけられなくなります。 したがって、親名義の家を相続したら、なるべく早く「法務局」に行き、その家屋や土地の名義を相続した人に変更する手続きを行う必要があるのです。
手続きに必要な書類は、次のうち、どの方法で親名義の家を相続したかで変わります。
- 遺言書による相続
- 遺産分割協議による相続
- 法定相続分による相続
遺産分割ではまず遺言書があるかどうかを確認します。 もし遺言書がない場合や、遺言書で未指定の財産がある場合は、相続人全員で遺産分割協議を行います。 このとき、法定相続分(法律であらかじめ決められた割合で分ける)という方法をとっても構いません。 親名義の家を相続した原因となる手続きがこの3つのどれに該当するかで、名義変更の手続きに必要となる書類が変わるということです。
親名義の家を相続したら相続税がかかるの?
親名義の家は、相続税の対象になります。
したがって、その「相続税評価額」を計算して、相続財産の価額に計上しなければなりません。
家の場合、土地と家屋に分けて相続税評価額が計算されることとなります。
相続税の基礎控除額とは
どのような財産にしても、相続税を計算する上で知っておかなければならないのが、「基礎控除額」です。 相続税は、相続財産の合計から基礎控除額を差し引いた金額にしかかかりません。基礎控除額は、3,000万円+600万円×法定相続人の数で計算されます。 法定相続人とは、被相続人(亡くなった方)と一定の親族関係にある人のことです。もし相続財産がこの基礎控除額以下であれば、相続税はかかりません。 「いくら何でも、家と土地を含めて、相続財産の合計が基礎控除額以下になることなんてないのでは?」と思う方も多いと思います。 しかしながら、ここでの金額はあくまで「相続税評価額」とよばれる独自の基準で計算された金額です。 そして家など不動産の「相続税評価額」は、実際の購入価額より安くなるケースが多くなります。 特に家の土地については、次項で解説する「小規模宅地等の特例」によって、評価額を大幅に下げられる可能性があります。
親名義の家の相続税評価額の計算方法
相続税評価額は、家屋と土地それぞれで計算方法が異なります。
家屋の相続税評価額
家屋の相続税評価額とは、固定資産税評価額のことです。
固定資産税評価額とは、市町村が、固定資産税という税金を徴収するために算定する金額になります。
固定資産税評価額もまた、土地と家屋それぞれに計算されるものですが、相続税評価額にそのまま使用できるのは家屋のみとなります。
目安としては、家屋の固定資産税評価額の場合、一般的には建築価格の5割から7割ほどと言われています。
さらに、家屋の場合は、その建築素材などから割り出された係数で減価されます。つまり、経過年数によって少しずつ価値が下がるということです。
正確な金額は、毎年4月ころに、固定資産の名義人宛てに発送される「固定資産税課税明細書」に記載されています。
手軽に相続税評価額が確認できるため、親名義の家を相続する場合は、一度確認しておきましょう。
土地の相続税評価額
路線価方式
親名義の家を相続する場合、その土地も親名義であれば、その相続税評価額は、土地の路線価を使用します。 この計算方法を「路線価方式」といいます。 相続税用の土地の路線価とは、毎年7月に国税庁が発表する、道路の価値です。 計算方法をざっくり話すと、土地が接する道路の路線価に、その土地の面積をかけて計算するイメージになります。 しかしながら、正確には、その土地の形、間口の広さなどで補正率が加わり、2本以上の道路に面している場合は、正面とする道路を決める計算手順が加わります。 出口が狭い土地や縦長の土地など、使い勝手の悪い土地は、この補正率によって価値が下がります。 この補正要件が非常に多く、複雑であることから、土地の相続税評価額の計算は相続の専門知識が必要になります。 土地の相続税評価額の計算は、必ず専門家に依頼しましょう。
倍率方式
路線価のない道路に面した土地もあります。 その場合は、国税庁が定める「評価倍率」を、その土地の固定資産税評価額にかけて計算する方法(倍率方式)を使用します。 ただし路線価は毎年発表され、以前は路線価がなかった道路にも、新たに路線価が付されることがあります。 したがって、必ず最新の路線価図をチェックしてください。
”親名義の土地の相続税評価額 まとめ”
親名義の家の相続税評価額の計算方法をまとめます。
- 家屋・・・固定資産税評価額×1.0
- 土地・・・国税庁が決める路線価(なければ評価倍率)から計算が必要
路線価、評価倍率はともに国税庁のHPで確認することができます。
国税庁「路線価図・評価倍率表」
http://www.rosenka.nta.go.jp/
親名義の土地に「小規模宅地等の特例」
小規模宅地等の特例とは、納税者が有利に相続税を計算することが認められる特例です。 親名義の家の土地を相続する場合、「小規模宅地等の特例」が適用できる可能性があります。 「土地」の計算に限定される特例となりますが、適用できれば8割も評価額を減額することができるかなりお得な税制です。 たとえば、土地の相続税評価額が8,000万円であれば、1,600万円になります。 つまり本来の評価額の2割になるということです。 適用できる面積は、330平方メートル以下と限られていますが、この上限を超える土地についても、その超えた部分が減額の計算対象外となるだけですから、適用すること自体は可能になります。 しかもこの特例は、基礎控除額を差し引く前に適用されます。 もし適用した後の金額が基礎控除額を下回れば、相続税は無税にできるというわけです。(ただし相続税の申告は必要となります)
親名義の土地に小規模宅地等の特例を適用するための要件
親名義の家で小規模宅地等の特例を適用するには、その土地が親名義(被相続人名義)であることが前提です。
またその土地をお子さんが相続する場合、その土地の生前の用途によって必要となる条件が変わります。
親(被相続人)が住んでいた土地を相続する場合
生前に親が住んでいた親名義の土地をお子さんが相続する場合、小規模宅地等の特例を適用するには、その親と同居していたか別居していたかで条件が変わります。
生前に親と同居 | 相続税の申告期限まで | その他条件 | |
その土地を所有 | その土地に居住 | ||
している | 必要 | 必要 | なし |
していない | 必要 | 必要 | ・被相続人に配偶者・法定相続人である同居親族がいない ・持ち家を所有したことがなく、かつ過去3年以内に一定の親族の持ち家に住んだことがない |
別居していたお子さんの場合、親の配偶者や、同居していた親族がいない場合しか適用できず、持ち家に関して厳しい条件がある点に注意が必要です。 また、相続税の申告期限までその土地を所有していること、もともと同居していたお子さんは、相続税の申告期限まで住み続けることが条件です。 すぐに引っ越したり、売却したりするとこの特例は使えなくなります。
親名義の土地に同一生計のお子さんが住んでいた場合
生前に、親名義の土地に同一生計のお子さんが暮らしていて、その土地を相続するケースです。たとえば、親が介護施設で暮らすこととなり、お子さんがその家を引き継いだケースなどが考えられます。
この場合、相続税の申告期限まで、その土地を所有して住み続けることが条件です。ただし、同一生計の要件があるため、独立して生活している親子では成立しません。また、その土地を有償で借りているケースも対象外です。
小規模宅地等の特例は「配偶者」が最も使いやすい
ここまで、親名義の家の土地をお子さんが相続した場合を想定しましたが、親に配偶者がいれば、本来はその方が相続することが多いでしょう。 配偶者であれば、上記のような複雑な要件を満たさなくとも、小規模宅地の特例が適用できます。
親名義の家の固定資産税って相続人が払うの?
親名義の家の固定資産税は、親の債務です。
相続では債務を含めた遺産を相続することとなるため、相続した家の固定資産税は、相続人で負担しなければなりません。
しかしながら、固定資産税は債務控除の適用が可能です。
固定資産税とは
固定資産税とは、毎年1月1日現在で、その不動産を所有している人に市町村から課税される税金です。納税額の通知は4月ころで、年4回に分けた納付書を添付してくることが一般的になります。 固定資産税の税率は、市町村が算定する固定資産税評価価額に対して1.4%です。
相続した親名義の家の固定資産税は誰が払うの?
年の途中で親が亡くなっても、固定資産税については、毎年1月1日の所有者を基準に、4月になると納税通知書や課税明細書が送られてきます。 では、親名義の家を相続した場合の固定資産税がどうなるかというと、相続では、最後に通知された1年分の固定資産税は、全て親の債務となります。 1月1日時点で、納税義務が確定したと扱われるからです。 したがって、未納の固定資産税を相続人が負担した場合は、「債務控除」を適用することができます。
債務控除とは
債務控除とは、被相続人が支払うべきお金を相続人が支払った場合、相続税の計算上、その相続財産から控除できるという制度です。 債務控除は、小規模宅地等の特例と同様に、基礎控除額を差し引く前の金額から控除するものになります。 ただし、債務控除の対象となる固定資産税は、あくまで相続人が支払った固定資産税に限られます。 もし相続が発生する前に、被相続人が固定資産税を4回分全て支払っていた場合は適用されません。
そもそも親名義の家は相続するしかないの?
親名義の家は、親が亡くなった後であれば、相続放棄をしない限り、誰かが相続しなければなりません。
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- 相続放棄・限定認証の手続きをする
家だけ相続しないというような手続きはできず、仮にすぐに売却したいと考えていたとしても、一旦はその家の名義を、被相続人から相続人に変更する手続きが必要です。
しかし親が亡くなる前であれば、親名義の家をどうするかには、様々な選択が考えられます。
親が住まないのであれば売却や土地活用を検討するのもよいでしょう。どうするのがお得かは、ご家族の生活形態や財産の状況によって個別に判断する必要があります。
親名義の家を相続するときの注意点
最後に、親名義の家を相続するときの注意点をご紹介します。
認知症になると生前の売却が難しい
もし親が施設に入所する、あるいは親族と同居することになり、空き家状態となる場合は、生前に売却するのも手です。売却すれば、その家の管理の手間やコストをカットすることができます。
しかしながら、親が認知症になってしまうと、生前の売却は容易ではなくなります。家の処分は、名義人である親が行わなければならず、いくら家族でも代わりに処分できないのです。
親名義の家を押し付けられる
小規模宅地等の特例を使って、相続税を減額したいと考える方は多くいらっしゃいます。そして親名義の家は、その家に住まないお子さんにとっては必要のない財産です。
このことから、家を他の兄弟に押し付けて、代わりに現金を多くもらえた方がいいと考える人もいます。もしこうした考えをお持ちの親族がいると、小規模宅地等の特例を逆手にとって、望まない家を、同居親族に押し付けるケースもあるのです。
まとめ
相続対策は、生前に行うことがベストです。
認知症になってしまい、財産が動かせなくなってしまった後では、いくら有効な相続税対策があったとしても何もできなくなってしまいます。
特に親名義の家の相続は、分かりづらいことも多く、押し付けの対象になることもあって、遺産分割協議でもめることの多い財産です。
遺産分割協議でもめないために、親名義の家がある場合は、早めに相続の専門家に相談しましょう。
どのような分割方法がそれぞれのご家庭でベストか、相続の専門家が一緒に答えを考えてくれるはずです。
【監修】池原充子(終活専門相談員)
これまでの略歴
身元保証 課程修了
エンディングノート講師 課程修了
遺言作成講師 課程修了
認知症サポーター 課程修了
兵庫県尼崎市出身
京都外国語大学中国語学科卒
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エンディングノート講師 課程修了
遺言作成講師 課程修了
認知症サポーター 課程修了
兵庫県尼崎市出身
京都外国語大学中国語学科卒
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