延命治療とは?終末期に入る前に確認すべき患者と家族の意思

医療が発達するほど私たちの寿命は長くなります。延命治療を行えば寿命は延びますが、はたしてそれは本当に患者のためなのでしょうか。終末期を迎えた患者と家族が確認すべき延命治療についてご紹介します。

がん患者などの終末期における一般的な延命治療とは

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終末期とは、病気が治る可能性が低く、余命が数ヶ月以内と判断される時期のことです。ターミナル期とも言います。治療を続けても病態が改善する可能性が極めて低いため、終末期に入ると、患者は延命治療をするかどうかを決めなければいけません。

延命治療とは読んで字のごとく命を延ばすこと、つまり寿命を延ばすことです。代表的な延命治療には、次のようなものがあります。

・人工呼吸器
・人工栄養法
・人工透析

人工呼吸器とは、自力で酸素を取り込めなくなった肺の代わりにガス交換を行う機械のことです。医療ドラマでも口にマスクを当てたり喉に管を通しているシーンを目にすることがあるでしょう。終末期になると、人工呼吸器を外せば命が亡くなってしまう、という状態でつけている方も少なくありません。

人工栄養法とは、口から食事を摂ることが難しくなったときに胃や腸から栄養を直接送り込む方法のことです。嚥下機能が著しく低下している方が人工栄養法の対象となります。胃に穴を開けて管を通す胃瘻は代表的な人工栄養法の1つです。

人工透析とは、働きが弱くなった腎臓の代わりに血液をろ過するものです。透析をしなければ血液にどんどん不純物が蓄積して肺水腫や尿毒症などの原因となります。人工透析は止めると数日~数週間程度で命を落としてしまうことになるため、延命治療の1つとして捉えられているのです。

延命治療で大切なのは本人の意思確認

人工呼吸器や人工栄養法、人工透析などはどれも、働きが弱くなった体の機能を人工的に補う治療です。これらの延命治療を行うことで命をつなぎ止めることができますが、治療を止めればつなぎ止められていた命は悲しくも天国へ旅立ってしまいます。

延命治療をするかどうかの決定に関わることができるのは、主に医師、患者、そして患者の家族です。基本的には医療機関側ができるだけ命を長持ちさせる方向で動くので、当たり前のように延命治療が行われることが多いでしょう。

しかし、患者の誰もが延命を望んでいるわけではありません。ある調査によると、延命治療を行わず自然に任せて欲しいと回答した患者の割合は90%を超えたそうです。

「体の自由がきかないのに延命されてもツライだけだ」
「そこまでして長生きしたくない」

と考える患者が少なくないのです。ところが患者の家族は、本人が延命治療を希望しないと頭では分かっていても「長生きしてほしい」「できる限りの治療をしたい」という考えがどうしてもよぎり、延命治療を進めようとしてしまいます。患者と家族の希望は必ずしも一致しないのです。

とはいえ、患者本人の意思疎通が取れる場合は患者の意思を重要視する傾向があります。本人の意思を示すものとして大切になるのが事前指示書と呼ばれるものです。終末期に差し掛かった場合にどのような延命治療を受けるのかをあらかじめ意思表示しておくものになります。

これはリビングウィルとも呼ばれ、蘇生をするかどうか、胃瘻を作るかどうかなど自分の治療に関する要望を記しておくものです。事前指示書があることで、万が一患者との意思疎通が難しくなった場合でも「延命治療を行って良いのだろうか」と家族が必要以上に悩んでしまうことが少なくなります。

終末期の延命治療を行わない選択肢を受け入れる覚悟も必要

事前指示書は患者だけの意思で作ることもあれば、家族と話し合って決めることもあります。理想は家族と一緒に作成することです。「命は誰のものか?」と聞かれると難しい話ではありますが、少なくとも終末期になると家族に支えられながら生きている命であることには間違いありません。家族と患者の意思疎通がうまくいかないことで、希望しない医療を受けることにもつながるため、事前指示書は家族と話し合って作ることが望ましいと考えられます。

ところで、もし事前指示書を作る際に患者が「延命治療を希望しない」と意思表示をしたら、家族はどのような反応をするでしょうか。おそらく多くの方が「できる限りの治療をしてみようよ」と声をかけるのではないでしょうか。

このような事態になったときに思い出して欲しいのが、尊厳死という言葉です。尊厳死とは、延命治療は行わず人間としての尊厳を保ちながら安らかに最期を迎えることを意味します。

もっと長生きしたいと思うか、ツライ思いをするくらいなら延命治療をしなくて良いと思うかどうかは、患者の自由です。患者が「延命治療を希望しない」と意思を決めたのなら、家族はその意思をできえる限り尊重してあげましょう。そして患者と納得のいくまで話し合って事前指示書を作ることが大切です。

延命治療の意思が変わることもあるので小まめに相談しよう

事前指示書を作ったからといって、それで終わりというわけではありません。事前指示書は終末期に入った際に受けたくない治療を意思表示しておくものですが、時間が経つと考えが変わることもあります。

「孫の顔だけでも見ておきたい」「やりたいことができた」など、途中で意思が変わる可能性がゼロではありません。事前指示書を1度作ったからといって安心しきらずに、小まめに「意思に変わりはないか?」を確認することがとても大切です。患者本人が納得のいく人生を全うできるよう、柔軟に話し合いを重ねてお互いに悔いが残らないようにしておきましょう。

介護や看護など家族の負担も忘れてはいけない

終末期を迎えた患者の中には、最期を病院ではなく自宅で迎えたいと希望される方もいます。命を引き延ばされた状態で病院にこもっているよりも、本来与えられた命を家族に囲まれて過ごしたいと思うのはごく自然なことです。

もしも延命治療をせず自宅で過ごすという選択になった場合は、家族に負担があることも忘れてはいけません。いつ急変するか分からない不安感、24時間体制で介護や看護を続ける体力的な負担が家族にはあります。

事前指示書は、延命治療の希望だけでなく最期を迎えたい場所を決めておくものでもあります。できるだけ患者に寄り添って意思を尊重したいという気持ちがあったとしても、どうしても難しいこともあるでしょう。お互いにむりのない範囲で最期を迎えられるよう、患者と家族とでよく相談し、事前指示書を作っておくことがやはり大切になります。

まとめ

望まない延命治療は、患者本人にとって良いものだとは言えません。苦しい治療を続けるよりも、安らかに過ごしたいと願う方ことはごく自然なことです。しかし家族も患者と同様のことを考えているかと聞かれれば、そうではないことのほうが多いでしょう。

患者が本当に望んでいる治療を進められるようにするためにも、事前指示書をあらかじめ作成しておくことが大切です。事前指示書があるだけで「望まない治療を強制してしまったのではないか」と家族が頭を悩ませ後悔することがなくなります。患者と家族、両方が納得のできる最期を迎えるためにも、しっかりと相談し治療方針の焦点を絞っておくことが大切です。

終活全般相談窓口メールでのご相談
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【監修】池原充子(終活専門相談員)

池原充子

これまでの略歴

身元保証 課程修了
エンディングノート講師 課程修了
遺言作成講師 課程修了
認知症サポーター 課程修了

兵庫県尼崎市出身
京都外国語大学中国語学科卒

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