【遺産分割前の相続預金の払戻し制度について】みんな、終活一年生
【遺産分割前の相続預金の払戻し制度について】今週の終活ウォーミングアップ
今週は、平成30年に改正され、令和元年7月から施行されている「遺産分割前の相続預金の払戻し制度」についてお話したいと思います。
大前提として、「亡くなった方の預貯金口座は、凍結されてしまうので、家族といえども勝手に預金から引き出すことができない」という事を知っておく必要があります。凍結された相続預金を払い戻すには、「遺産分割が終了し、相続人全員の印鑑証明書がなければならない」ので、すぐに必要になる葬儀費用や入院費(病院に入院中に亡くなった場合)などの支払いに非常に困った、という声が本当にたくさんありました。
想像してみてください。
家族が亡くなったという悲しみと混乱しかない中、相続人全員の書類を集めないといけない負担。
普通の精神状態ではない時に、今までやったこともない煩雑な事務手続きをやらなければならない苦痛。
想像するだけで頭が痛くなるのに、下記のような段取りをしないといけないんです。
相続預金払戻しのおおまかな流れ
- まず「相続人は誰なのか?」を確定させるために、亡くなった方の戸籍謄本(生まれてから亡くなるまでの連続したもの)を集める。
- 相続人が確定したら、相続人全員の戸籍謄本を集める。
- 相続人全員で遺産分割協議を行う。
- 相続人全員が納得したら、遺産分割協議書を作成する。その際、遺産分割協議書に相続人全員の実印を押印する。
- 遺産分割協議書と相続人全員の印鑑登録証明書をそろえて銀行へ提出し、ようやく凍結された口座から払戻しすることができる
これだけで数か月から数年かかるかもしれません。その間一切払戻しができないとなると、相続人の負担は大変なものだと思いませんか?そこで、令和元年7月から「遺産分割協議が終わる前でも、相続預金の払戻しが受けられるようになったのが、「遺産分割前の相続預金の払戻し制度」です。
この払戻し制度は、
- 同一の金融機関(複数の支店に相続口座がある場合はその全支店)からの払戻し上限は、150万円
- 払戻し額の計算式は、
単独で払戻しを受けられる金額 = 相続開始時の預金額(口座・明細ごと)×1/3×払戻しを求める相続人の法定相続分
上記計算式に基づいて払戻し例を見てみましょう。
例1
相続人が長男、次男の2名で、相続開始時の預金額が普通預金600万円だった場合
長男が単独で払戻しできる額 = 600万円x1/3x1/2 = 100万円
例2
相続人が長男、次男の2名で、同じ銀行に、普通預金600万円、定期預金600万円があった場合
長男が単独で払戻しできる額 = (600万円+600万円)x1/3x1/2 = 200万円
ただし、同一の金融機関からの払戻し上限は、150万円なので、上記の200万円ではなく、払戻しできるのは、150万円となります。
この制度を利用する場合でも、
- 亡くなった方の戸籍謄本(生まれたときから亡くなった時までの連続したもの)
- 相続人全員の戸籍謄本(亡くなった方の戸籍謄本で確認できる場合は不要)
- 払戻しを希望する相続人の印鑑登録証明書
が必要になりますので、払戻しには、ある程度時間がかかるようです。亡くなった後すぐ使えるようにまとまった現金を準備しておきたい、という方は、「生命保険をかけておく」ことをお勧めします。
死亡給付金は、必要書類を送ってから1週間ほどで保険金受取人口座へ振り込まれますので、残された家族は、とても助かると思います。
次回は、「もし亡くなった方の口座がどこにあるかわからない」という場合の対応についてお話します。
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