空き家を売りたい人が近年増えています。空き家は相続した自分のご実家であることが多いようです。子どもの頃の思い出が詰まったご実家が納得のいく価格で売却できるよう、そのお手伝いができる情報をお届けできれば幸いです。
空き家を売りたいと思った時に始める3つのこと
空き家を売りたいと思った時に始める3つのこと
- 空き家・土地の相場価格を調べる
空き家・土地の売却価格は売主が自由に設定することができます。少しでも高く売りたいのは売主の共通の気持ちですが、物件に見合わない高い価格に設定してしまうと、売れるものも売れなくなってしまいます。そこで、売りたい空き家がある周辺の場所での土地や建物の相場価格を調べておきましょう。
調べる方法は、サイト検索です。国土交通省が運営するサイトなので安心です。
土地総合情報システム
エリアごとに過去5年分の取引情報を閲覧できます。取引価格のほか、土地では坪単価・面積・形状、建物では延床面積・建築年・構造・建ぺい率・容積率など詳細に表示されます。似たような空き家がどのくらいの価格で取引されたのかを調べてみましょう。
- 査定時に必要な書類をそろえる
インターネット上での机上査定に書類は必要ありませんが、不動産会社の担当者を招いての訪問査定時には必要な書類があります。既に交付されていて家のどこかに保管されているものもあれば、これから取得しに行く必要があるものもあります。査定日間近に慌てなくて済むよう、あらかじめ準備しておきましょう。
また、空き家の名義人が査定依頼人本人でなくても査定してもらうことはできますが、家を売ることはできません。亡くなった親や親戚が空き家の名義人になっている場合には、早めに名義変更手続きをしましょう。なお、名義人は登記簿謄本で確認ができます。必要書類
・登記簿謄本(登記事項証明書のこと)・登記識別情報(廃止前の権利証のこと)・公図・測量図・建物図面・重要事項説明書
- 不動産会社を探す
空き家を売買する際、仲介業者である不動産会社を必ず通さなければならないという決まりはありません。個人間で売買契約を結んでも法律上の問題は全くないのです。しかし、住宅ローンを組む手続きが難しかったり、後のトラブルを回避するため不動産会社を通しての売却がほとんどです。
不動産会社と契約をすると売買が成立した時に仲介手数料を支払う必要がありますが、空き家を売るための活動や契約の手続きなど頼もしいサポーターとなってくれます。
不動産会社の役割
- 空き家の基礎調査、価格査定
- レインズへの登録(レインズとは、国土交通大臣が指定した不動産流通機構が運営する不動産情報サイトです)
- 広告宣伝活動
- 売買活動の定期的な報告
- 購入希望者の募集、内覧の対応、交渉
- 契約締結と契約に関する書類の作成、交付
- 決済
- 空き家の引き渡し
良い不動産会社を探す方法は、複数の不動産会社に査定依頼をすることから始まります。会社の規模や知名度で最初から一社に絞り込むのは危険です。複数の会社から選びましょう。
不動産の一括査定を使えば、インターネットで複数の地元の会社から無料見積もりを受けることができますので活用ください。
次に、良い不動産会社を選ぶ判断ポイントについてです。
査定額が高い=良い不動産会社、ではありません。ご自分で調べた相場価格を元に適正な査定額であるか、査定額の根拠がしっかりしているかがポイントです。また、担当者がしっかりしていて信頼できる人柄かどうかも判断しましょう。大事な空き家を自分に代わって売ってくれる人であり、この先何度も連絡を取り合う関係になる人です。“この人なら大丈夫”と思える担当者のいる会社を選びましょう。
また、売りたい空き家のある周辺に類似物件の売買実績があることもポイントです。
不動産会社との媒介契約と売却までの流れ
不動産会社との媒介契約について
良い不動産会社を選んだ後は、いよいよ媒介契約です。この場合の媒介契約とは、空き家が売れるように活動することを不動産会社へ依頼するための契約です。
契約には契約内容の条件のちがいによって、専属専任契約、専任契約、一般契約の3種類に分かれています。条件にはさまざまありますが、大まかなちがいを説明します。
専属専任契約
売主が媒介契約を結べる不動産会社は1社のみで、複数の不動産会社と媒介契約を結んで売却活動をすることはできません。売主が買主を自分で探して直接取引することはできません。売買取引は不動産会社を通してのみ行われます。
専任契約
専属専任契約と同じく、売主が媒介契約を結べる不動産会社は1社のみで、複数の不動産会社と媒介契約を結んで売却活動をすることはできません。売主が買主を自分で探して直接取引することが可能です。ただし、売主が買主を自分で探したからといって仲介手数料を安くしてもらえるかはわかりません。
一般契約
複数の不動産会社と媒介契約を結ぶことが可能です。また、売主が買主を自分で探して直接取引することも可能です。
売却までの流れ
不動産会社と媒介契約をした後は、ほとんどの工程を不動産会社に任せることができるので安心です。売主は内覧希望者がいつ来ても良いように空き家の中を清潔に保ち、庭の雑草取りなど外回りにも気を遣いましょう。
- 媒介契約後、売り出し開始
- 内覧(不動産会社が案内してくれます)
- 購入希望者との契約条件の交渉(不動産会社が対応してくれます)
- 契約締結(不動産会社が契約に関する書類を作成し交付してくれます)
- 決済・家の引き渡し(不動産会社が対応してくれます)
価格を左右する査定ポイントと査定時の注意点
査定には「机上査定」と「訪問査定」があります。
机上査定は実際の空き家を見ずに建物の情報だけで査定を行い、およその査定額を決める方法です。インターネットの一括査定などで用いられる方法です。
一方、訪問査定は実際に空き家を訪問し建物の状態や周囲の環境を目で確認しながら行います。
机上査定のあとに訪問査定を行うのが一般的で、机上査定のみで不動産会社に売り出してもらうことは難しいです。
机上査定では次のポイントを元に査定額を決定しています。
・物件の種類 ・所在地 ・築年数 ・間取り ・建物の面積 ・敷地周辺の道路の幅 ・周辺の不動産の売り出し状況 ・市場動向
訪問査定では机上査定のポイントと次のポイントを元に査定額を決定しています。 ・建物、内部設備の状態 ・窓からの眺め ・日当たり ・風通し ・騒音、近隣の様子 ・最寄駅、バス停からの距離や歩きやすさ ・交通量
訪問査定時には空き家の第一印象に気を付ける
訪問査定時には空き家の第一印象が良くなるよう、部屋の掃除、設備のチェック、臭い(ホコリの臭い、締め切っていた部屋の臭い、下水の臭い、など)に気をつけましょう。庭の草むしりも大切です。
査定ポイントには部屋の汚さや臭いは入りませんが、空き家を放置していたこと自体が建物だけでなく売主の印象をも悪くします。また、内覧時には「ここに住みたい」と思ってもらえるような状態にしておかなければなりません。遅かれ早かれ手入れが必要ですので、早めに行いましょう。
査定時のリフォームは無用
先程、訪問査定時の第一印象を良くしましょうとご紹介しましたが、リフォームまではしなくて良いです。むしろ、しないほうが良いです。
なぜなら、中古の空き家を探している人は自分でリフォームすることが前提の人が多いからです。自分好みの仕様にリフォームすることが楽しみであり、売主のセンスで行ったリフォームの仕様が買主の趣味に合わない場合は売れません。また、リフォーム費用の分で販売価格が高くなり購入希望者が減る恐れもあります。
リフォームまでは行わず、部屋の掃除、設備のチェック、臭いなどに気を配りましょう。
空き家が遠方にある場合の売却方法
売りたい空き家が売主の実家の場合、現在お住まいの場所から遠方にあってどのように売れば良いか困っている人もいます。親が亡くなり実家を相続した方、親の施設入居がきっかけで実家が不要になってしまった方、理由はさまざまです。
遠方にある空き家へ足を運ばずに売却できれば良いのですが、やはり全く足を運ばずに売却するのは難しいのが現状です。また、地域の知見の深さから見ても、遠く離れた場所にある不動産会社を利用するより現地の不動産会社に依頼した方が売れやすいことは明らかです。
では、できるだけ少ない往復回数で遠方にある空き家を売るためにはどうしたら良いのでしょうか。
インターネット検索をすれば、現地(空き家がある場所)周辺の不動産会社がわかります。その不動産会社の中でインターネット上の机上査定を行っている会社を見つけ、机上査定を行います。そして、ご自身で調べた相場価格をもとに訪問査定を依頼する不動産会社を決め予約をしましょう。
2訪問査定前に掃除と現地調査を兼ねて足を運ぶ
訪問査定前に掃除や手入れをするために一度空き家へ足を運びましょう。最後に訪れた日から数カ月しか経っていないとしても、査定前には必ず一度確認しておきます。たとえ数ヶ月でも人が住んでいない空き家は状況が大きく変わってしまうのです。ゴミが不法投棄されていたり、締め切った部屋にカビが生えたり、雑草が生い茂っていたりします。
そして、掃除の合間に散歩・ドライブがてら周辺にインターネットに載っていない不動産会社がないかチェックしましょう。インターネットには載っていなくても、地元の不動産に強い会社はたくさんあります。良さそうな不動産会社を見つけたら時間が許す限りで査定依頼をしておきましょう。
3訪問査定当日は必ず足を運ぶ
訪問査定当日には必ず足を運び、不動産会社の担当者を案内しましょう。売主不在での訪問査定はできません。依頼する不動産会社が決まるまでは訪問査定日前の掃除と査定当日には足を運び、その度に掃除や現地の不動産会社探しをします。
空き家を土地として売るという考え方
これまでは空き家を「中古住宅」として売ることを前提にご紹介をしてきました。しかし、空き家があまりにも古く人が住めないと不動産会社に判断されると中古住宅として販売することはできません。空き家を売りたいと考えている人にとっては絶望的な気持ちになるかもしれませんが、諦めてはいけません。まだ空き家を売る方法があります。
それは、中古物件として販売するのではなく「土地」として売る方法です。
土地には「古家付き土地」と「更地」の2種類があります。こちらの2種類をメリットとデメリットを含めてご紹介します。
古家付き土地
古家付き土地とは、建物が付いている土地のことです。この場合の古家は人が住めないと判断された空き家も含まれます。空き家を取り壊さずに空き家が付いている土地として売り出します。メリットが大きいので、中古住宅として売却できる空き家をあえて古家付き土地として売る人もいるようです。
メリット
あくまで「土地」を売却することから、売却後の空き家について瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)がないことです。(瑕疵担保責任があると、売却後に白アリや雨漏りの被害があった場合、売主が責任を負う必要があります。)また、土地の売却なので古家である空き家を内覧させる義務はありません。さらに、空き家の解体をしないので解体工事費用がかかりません。
デメリット
売却額が中古住宅より低いということです。人が住めない住宅として判断されているため、あくまで土地のみの売却額になります。
更地
更地とは、建物がなく使用収益を制限する権利(借地権など)がついていない土地です。空き家は解体しなければなりません。
メリット
買主が見つかりやすいことです。最初から更地となっていれば買主が解体工事の手間や費用に煩わされることなく、すぐに家を建てることが可能なためです。
デメリット
解体工事の手間と費用がかかることです。また、土地は建物があると固定資産税が減税になります。更地にすると建物がなくなるため減税対象にならず、もし買主が見つからない場合には長期間において税金の負担が大きくなります。
まとめ
人が住まなくなった家はあっと言う間に劣化します。空き家を売りたいと思っても何もせずにいると、どんどん劣化が進み査定額は下がるだけです。満足のいく売却額を受け取り、空き家やその土地を気に入って使ってくれる人のためにもできるだけ早く売却の準備を始めましょう。
【監修】池原充子(終活専門相談員)
これまでの略歴
身元保証 課程修了
エンディングノート講師 課程修了
遺言作成講師 課程修了
認知症サポーター 課程修了
兵庫県尼崎市出身
京都外国語大学中国語学科卒
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身元保証 課程修了
エンディングノート講師 課程修了
遺言作成講師 課程修了
認知症サポーター 課程修了
兵庫県尼崎市出身
京都外国語大学中国語学科卒
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