終活の相談窓口として年々存在感を高めている市町村役場ですが、その取り組みの内容は市区町村によってさまざまです。実際、役所に相談に行ったことがない方は「そもそも何を相談できるか分からない」という方も多いのではないでしょうか?
そこで、終活サポートでは市区町村の担当者の方にインタビューを行い、具体的にどのようなサポートを行っているのかを皆さんにお伝えしていきたいと思います。今回は、岡崎市役所の福祉部ふくし相談課、早川さんにインタビュー形式でお話を伺ってみました。
岡崎市役所の福祉部ふくし相談課 早川さんにインタビュー
岡崎市役所の早川さんにインタビュー
まず、岡崎市で行っている終活支援の内容を教えていただけますか?
2018年に終活ノートの配布を始めたのを皮切りに、2023年現在では出前講座の開催、終活スゴロクやおかざきゴールデンシニア人生ゲームの実施、終活フェア等での参加など様々な活動を行っています。
とても幅広い支援をされていますね。岡崎市で終活支援事業に取り組み始めたきっかけは何ですか?
多くの方の相談を受けている中で「一人ひとりが困難な状況になる前に終活をしておく」という必要性を痛感したことです。
地域包括支援センターでは、お一人暮らしだったり認知症だったり、ご家族の方の支援を受けられない方だったり様々な方の相談を受けているのですが、そういった方々の相談を受けている中で非常に困る局面が多くありました。
相談者さんが大変な状況になる前に、事前に準備をしておけば良かったのになと思うケースが多いんです。
そういった対応をしている延長で、より高齢者の方々がより早く準備を進められるきっかけになれば、また、終活を考える良いきっかけになればと思い、終活スゴロクや人生ゲームといったコンテンツを用意し、市として提供できる支援の幅を拡大させていきました。
高齢者が悩むことや、よく相談されることはどんなことですか?
色々あるのですが、
- 退職後に地域活動に参加したいけどどうして良いか分からない
- 介護や健康づくりの観点の相談
- 家族が遠方で一緒に住んでいないので、地域の方に見守ってほしいという要望
- 一人なので死後の手続きが不安
などです。
あるいは認知症の方だと
- 財産管理や介護サービス等の契約の相談
- 支援をする側の意思決定支援
などといった相談もあったりします。 本当にさまざまな相談を受けていますよ!
「終活スゴロク」や「おかざきゴールデンシニア人生ゲーム」は非常にユニークだと感じたのですが、内容はどんなものですか?
終活スゴロク内では高齢者のよくある出来事を疑似体験できるゲームになっています。
例えば、オレオレ詐欺に遭ったり、認知症になったり脳梗塞になったりするんです。健康づくりに取り組んだり、制度の利用や地域の助け合いで乗り越えていきます。
「介護保険制度や成年後見制度などについて、皆さん知っていますか?相談できる人はいますか?準備できていますか?」というお話をし、終活ノートを配ったりしています。
終活って何から考え出して良いかわからないですけど、スゴロクを通して様々な出来事を体験することできっかけになりそうですよね!
はい。終活というと、亡くなった後の葬儀やお墓のことだったりマイナスなイメージが強く、皆さんの中にどこか抵抗感があるんですよ。
老人クラブや地域の町内会での要望を聞くと、暗い雰囲気で出前講座を行うというよりは、第二の人生をより充実させ、安心して暮らしていくために役立つことを話してほしいという声が多くあります。
そのため、私たちとしては高齢者の方々が暮らしていく上で苦労することや困ることを事前に防ぐための制度やサービス、準備の方法などといった情報提供をするようにしています。
終活支援にはどんなやりがいがありますか?
行政だけではなく、たくさんの事業者や人との繋がりの中でサービスを形にしていくという点にやりがいがあります。
終活支援はそもそも行政というよりは民間事業者の方が得意分野で、私たちの立場としては広く民間事業者の力と一緒にやっていきたいと思っていますので、終活ノートもスゴロクも民間事業者と一緒に取り組んで作り上げているんですよ。
その他には民間事業者と終活イベントや介護予防の活動をしたり、金融機関と連携して遺贈寄付の周知を行ったり、終活の講座を一緒に行ったりもしています。
相談者とのコミュニケーションで大事にしている点はありますか?
終活という言葉の定義があいまいなので、相談者の方ひとりひとりがどのようなニーズを持っているのかは慎重にヒアリングするようにしています。
選択肢もかなり幅広いので、なるべく偏った情報提供にならないように気をつけています。
また、あまり詳しくない状態で相談に来る方も多いので、「市が勧めたからこれがいい!」と思い込まれたりすることもあるのですが、本当に色々な方法があるので、様々な選択肢がある中でなるべく最終的に相談者の方が自己選択できるような状態になることを念頭にコミュニケーションしています。
実際に相談したり支援を受けた方からはどのような声をいただきますか?
意外と岡崎市では終活ノートを書いていない方が多いのですが、「今回の相談をキッカケに書きます」とおっしゃって頂ける方がいたり、「家族に少しずつ終活について相談してみます」という方もいらっしゃいます。
あとは、同じ高齢者同士が集うことによって「周りはやっているのに自分はまだやっていない」ということを知ってやらなければならないという気持ちになってくれる方もいらっしゃいますよ。
なるほど、他の人の交流が生まれることで生まれる気づきもあるのですね。
そうですね。やはり集団で講座を行うことによって自身の動機づけにもなりやすいので、そこは大きなメリットだと思います。
今後、高齢者の終活支援のために市役所が計画している新しい取り組みはありますか?
これからも終活が広く浸透するような仕掛けを民間事業者や周りの方々と連携しながら作っていきたいです。今は、終活サポートについての民間提案を募集しているところです。
また、終活スゴロクや人生ゲームに続いて、終活便利帳というものも作っており、また空き家に関するワークショップも予定しています。
終活をこれから始めようとしている岡崎市民の方へメッセージがあればお願いします!
終活は人生のしまい方だけではなく、第二の人生を安心して自分らしくおくるための活動でもありますので、まずは自分がどう暮らしたいのかという前向きな整理から始めてみてはどうでしょうか。
近年では相談できる場所も増えてきていますので、少しずつでも良いので誰かに話してみたり、できることから行動に移してみてください。
インタビューを終えて
いかがでしたでしょうか?
岡崎市では市役所でできることだけではなく、さまざまな民間事業者と提携した結果として前向きに終活を進めていけるコンテンツや集団講座を用意しています。
誰にも相談できず悩んでいる方は、まず相談してみてはいかがでしょうか。
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