終活相続で失敗しないために|相続をスムーズにするポイント

終活のなかでも注目度の高い相続分野は、失敗するとスムーズに進めることができなくなり、子世代が非常に苦労します。最悪の場合、子どもたち兄弟姉妹の間に深い溝が生まれ、修復不可能になってしまうかもしれません。

自分亡き後も、家族には皆仲良く、笑って過ごしてほしいものです。この記事では、家族が円満に、苦労なく相続を進めるために終活でできるポイントをお伝えします。また、実際にあった事例からも、相続で失敗しないためのコツをご案内します。

相続をスムーズにするためのポイント3つ

終活相続で失敗しないために|相続をスムーズにするポイント01

相続をスムーズにするためには、以下の3つに気をつけましょう。

遺言書を作成する

遺言書の効力は強力です。相続人たちがどのような意向を持っていても、法的に有効な遺言書があれば、基本的に故人の遺志が最優先されます。

「ウチは財産なんてないから、遺言書は必要ない」と考える人もいるでしょう。しかし、財産が少ない人ほど遺言書が必要です。とくに、自宅などの不動産があり、預貯金が少ない人の相続は揉めやすいといえます。不動産は分割が難しいため、相続人が数人いる場合、どうしても公平な相続ができにくくなります。

民法で定められた法定相続人それぞれに対し、相続できる最低限の割合である遺留分をおかさないよう配慮しながら、法的に有効な遺言書を作成しましょう。遺言書の主な種類には、自筆で作成する「自筆証書遺言」と、公証役場に出向いて公証人に作成してもらう「公正証書遺言」の2つがあります。

参考:自筆証書遺言と公正証書遺言の違い(法務局)(PDF)

あらかじめ遺言書の概要を各相続人に伝えておく

遺言書の素案が完成したら、できれば身内に対する披露の場を設けたいものです。相続人が一堂に会する場で遺言書の内容を開示し、納得を促します。意見を求め、より良い相続のために話し合ってもいいでしょう。

生前に各相続人へ実際の相続について伝えておくことで、心づもりをしてもらうことができます。みんなが納得する遺言であれば、きっと将来はスムーズに相続が進むでしょう。

ただし、遺言を披露した後は、遺言の存在が知られることになります。万が一にでも改ざんされることのないよう、遺言書の保管には気を遣いましょう。ただし、自筆証書遺言であれば、自筆証書遺言保管制度を利用することで改ざんを防止できます。公正証書遺言の場合は、最終版の原本が公証役場で保管されるため、基本的には安心です。

参考:自筆証書遺言保管制度(法務省)

遺言執行者を選定しておく

遺言書には、遺言執行者を選定しておくことができます。遺言執行者とは、遺言の内容を確実に実行するために、各種手続きを主体的に行う人です。

とくに争いは生まれないと想定される相続の場合、遺言執行者には相続人のひとりを選んで差し支えないでしょう。できれば同居や近居していて手続きの負担が最も少ないと考えられる相続人を遺言執行者にするのがおすすめです。

もし何らかの揉め事が起こりそうだったり、適任者がいなかったりと不安な場合は、法律の専門家に依頼し、遺言執行者になってもらうのがおすすめです。紛争にならないと考えられる場合は、行政書士や司法書士に相談しましょう。揉め事が起こりそうだったら、弁護士が最適です。

相続で失敗しないために知っておきたい事例

ここで、実例と先ほどのポイントを元に、相続で失敗しないためのヒントをお伝えします。知っておきたいのは、以下の3つの事例です。

生活費が引き落とせず公共料金も支払えなかった

故人の銀行口座が凍結され、故人の口座から生活費が引き落とせず、公共料金も支払うことができず、困ってしまったという事例です。 故人が亡くなったことを銀行側が知ると、故人の銀行口座は相続確定まで凍結されます。すると、故人に扶養されていた遺族は生活が一時的に困窮してしまう恐れがあります。遺言内容について相続人があらかじめ把握・納得しておき、また遺言執行者を指定しておくなどして速やかに相続手続きがなされれば、凍結解除のタイミングも早くなります。

元妻との子どもと遺産の配分でトラブルに

法律で決められた配分を主張しても、元妻との子どもは応じる気配がなく、トラブルになってしまったという事例です。この事例では弁護士が介入してやっと解決に至りました。 離婚歴があるなど相続が複雑になることが想定される場合は、なおさら遺言書を作り、各相続人の了解を得ておくのが大事です。揉めそうであれば、遺言執行者に弁護士を指定しておきましょう。

行方不明の相続人がいて相続が滞った

相続人のうちの1人と連絡が取れず、勝手に相続手続きを進めてしまおうと考えていたものの、専門家に相談したら特別な手続きが必要ということを教えてもらい助かった、という実例です。

相続人のうちの1人が行方不明の場合、家庭裁判所へ不在者財産管理人選任の申立てを行う必要があります。この手続きをしなければ遺産分割協議を行うことができず、相続がいつまでも完了しません。

子世代など自分が亡くなったら相続人になる人のうち、連絡が取れない人がいたら、その状況をきちんと解消しておきましょう。どうしても行方が分からない場合は、他の相続人に財産を与える旨を遺言書に残します。

【まとめ】遺言を準備し、情報を家族でシェアしよう

相続をスムーズに進めるには、生前からどのような相続にするか決め、家族で情報をシェアしておくのが近道です。誰が法定相続人になるのか、遺留分はどれほどなのかを調べながら、法的に有効な遺言書を作っておきましょう。

なお、遺言書の作成は、弁護士や司法書士、行政書士などの専門家に手伝ってもらうことも可能です。遺言書の作成補助を依頼した専門家を、そのまま遺言執行者に選定すると、よりスムーズに相続が進みます。少しでも難しいと感じたら、専門家に相談しましょう。

終活全般相談窓口メールでのご相談
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【監修】奥山晶子(終活カウンセラー、FP(2級))

奥山晶子

これまでの略歴

葬儀業界を経験した後、出版社勤務を経て終活全般のライターへ。2012年より2年間「葬送の自由をすすめる会」理事。終活カウンセラー、FP(2級)。近著に『ゆる終活のための 親にかけたい55の言葉』(オークラ出版)がある

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