認知症の人が作成した遺言書に効力は認められるか

相続で揉めないためには遺言書を作成しておくことが重要ですが、認知症を患っている方が作成した遺言書に効力はあるのでしょうか?
この記事では、遺言書の作成の際に注意する点や認知症を発症している方が有効な遺言書を作成するためにすべきことを解説します。

遺言書を作成すれば相続で揉める可能性が低くなる

認知症の人が作成した遺言書に効力は認められるか01

相続で揉めることを避けるためには遺言書を作成しておくことが重要です。遺言書には法的拘束力があり、相続人にとって不満な内容であっても受け入れざるを得ないケースが多くなるため、相続で揉めることが少なくなります。

遺言書に記載できる内容は限られており、遺産相続や相続執行者、後見人、子供の認知、祭祀主宰者の決定などに関することだけです。それ以外のことは「付言事項」に記載できますが、法的拘束力はありません。

また、書式や作成方法なども決められており、それに沿って作成されていない遺言書は効力が無くなってしまいます。普通のひとが決められた形式で遺言書を作成することは難しいため、弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。

遺言書は相続税を考えて作成するべき

相続税は誰に対して相続させたかで税率が変わってきます。配偶者に相続させた場合は「配偶者の税額の軽減」が適用されるため、1億6000万円まで相続税は課税されません。これは夫婦の財産は、ふたりでともに築き上げたものと考えられているからです。

また、自宅を相続させる場合、配偶者か同居している親族に相続させると、相続した土地建物の評価額の8割引きの金額が課税対象となる「小規模宅地等の特例」が適用されます。

その他にも相続の仕方で相続税が変わることがたくさんあるため、相続税のことをよく考えたうえで遺言書を作成することをおすすめします。

相続税のことを詳しく知りたい方は、弁護士でもよいですが税の専門家である税理士に相談した方が適切なアドバイスをしてもらえるでしょう。

普通方式遺言書には自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言がある

普通方式の遺言書には3種類あり、それぞれ特徴や作成方法が異なっています。自分の希望が最も叶えられる種類の遺言書を作成しましょう。

また遺言書はこの他に、死が目前に迫っている、感染症で隔離されている、船の中から出られず孤立している場合などに作成する特別方式遺言書があります。

遺言書の効力は判断能力の程度によって決まる

遺言書を作成したとしても、遺言者が認知症を患っていた状態で作成されたものであった場合、その遺言書は効力がないと判断されてしまうことがあります。

遺言書が有効であると認められるかどうかは、遺言者の判断能力(遺言能力)があった状態で遺言書が作成されたと判断されるかどうかによります。したがって、認知症を患っていても遺言能力があると認められれば、その遺言書は有効と判断されるということです。

遺言能力とは?

遺言能力とは、遺言内容を理解でき、遺言通り実行された結果どうなるかがわかることです。遺言能力が認められるには、15歳以上という年齢制限も設けられています。

認知症を患い判断能力が低下していること自体が問題ではなく、遺言内容を理解できるかが重要です。遺言内容が複雑で判断能力が少し低下した状態では理解できないと判断されたら、認知症がそれほど進行していない方でも無効となる可能性があります。

しかし、遺言内容が簡単で理解しやすいものであったら、判断能力がかなり低下していても遺言能力ありと判断される可能性があるのです。

このように遺言者が認知症を患っていたからといって、遺言能力がないと必ずしも判断されるわけではなく、認知症の進行度と遺言書の内容に応じて判断されます。

遺言能力があると認められるためには医師の診断書が大切

認知症を患っているかどうかは、医師による診察で判断されます。医師は、問診や画像検査、知能検査などさまざまな検査を行ったうえで認知症かどうかの診断を行います。

医師が遺言者を認知症が発症していると診断しても、遺言書に書かれている内容を理解する判断能力はあると判断してくれたら、遺言書は有効になる可能性が高いです。また、医師に依頼して、遺言者は遺言能力があるという診断書を交付してもらうことができます。

介護認定調査は遺言能力があるかの判断材料となる

介護認定調査は、身体的な状態だけではなく認知機能や思考などの調査も行ってくれます。そのため、遺言書の作成時期の近くに介護認定調査を受けると、その結果を遺言能力があるかどうかの判断材料として使えることがあるのです。

遺言者が認知症でも有効な遺言書を作成するためにすべきこと

それでは認知症を発症している方に、有効な遺言書を作成してもらうにはどうすればよいのかをご紹介します。無用な争いを避けるためにも、遺言書を作成するときに参考にしてください。

しかし、これからご紹介することを実行したとしても遺言者の状態や遺言内容によっては、必ずしも遺言書が有効なものであると判断されるとは限らないことを覚えておいてください。

公正証書遺言を作成しておくこと

遺言書にはいくつかの種類があることはご紹介しましたが、遺言者が認知症を発症している場合は公正証書遺言を作成するのがおすすめです。

公証人は、遺言者が明らかに普通の人ではないとわかると遺言能力があるか医師などに確認して作成します。しかし、それ以外のケースでは、公証人が遺言者に遺言能力があると判断して遺言書を作成しても主観に基づくものとなってしまうため、のちに遺言書が無効と判断されてしまう可能性があります。

このように公正証書遺言なら、必ず遺言書の内容が有効になるということではありません。実際、過去の裁判では、公正証書遺言を無効とする判決が出されたことが多くあります。

それでも公証人によって作成された公正証書遺言は、自筆証書遺言に比べると有効になりやすいことは間違いありません。

遺言能力があることを証明した上で遺言書を作成する

もしも裁判で遺言書の有効性が争われることになったら、作成当時の遺言者の状態や遺言内容、遺言が作成されてから遺言者が死亡するまでの期間などさまざまなことを総合的に考えて判断されます。

その中で最も重要になるのは、医師の診断です。遺言者が認知症を発症していたとしても、認知症の進行度や遺言書の内容などから考えて、遺言能力があると判断したうえで作成された遺言書ならば有効と判断される可能性は高いです。

したがって医師に遺言能力があるとしっかりと診断を受けてから、遺言書を作成することをおすすめします。

作成時の判断能力を示す動画や日記などを残しておく

遺言人に遺言能力があると医師に診断書を交付してもらったうえで、公証役場に行き公正証書遺言を作成してもらえば有効になる可能性は高いですが、さらにできることがあります。

作成している様子を映した動画、作成当時の遺言者の日常生活を映した動画やメモを残しておくことです。

遺言書を作成している様子を映した動画は、公証人と遺言者の会話や様子がわかります。遺言者の遺言書作成当時の状態を知るためには、日常生活を映した動画や日記があると効果的です。

このような客観的資料をできるだけ多く残しておくことで、遺言能力があったことを証明しやすくなるため、遺言書が有効になる可能性は一層高くなります。

遺言書の有効性に疑問を持ったときは弁護士に相談する

身内の遺言書作成では、感情的になり正しい判断ができないことがあります。本人は客観的に判断していると思っていても、第三者からみたら正しい判断ができていないことが多いです。

そのため、遺言者が認知症を発症していて遺言書の有効性に少しでも疑問を持ったときは、弁護士などの専門家に相談しましょう。

遺言書は認知症と診断される前に作成しましょう

この記事では遺言者が認知症を患っている場合についてご紹介しましたが、認知症と診断される前に遺言書を作成するのが理想です。認知を発症してからでも遺言書の作成は可能ですが、遺言者が認知症を発症してから作成した遺言書の無効性を巡り多くの揉め事が起こっています。

認知症はいつ発症し、どのペースで進行していくか予想が立てにくいため、遺言者の健康状態に関係なく遺言書を残したい・残して欲しいと思ったときに作成しておくべきです。

健康なうちに終活の一環として遺言書を作成し、自分が亡くなったあと自分の意思がしっかり守られるようにしておくことは、自分だけでなく家族のためにもなります。

【まとめ】

相続をスムーズに進めるためには、法的拘束力がある遺言書を作成しておいた方がよいでしょう。しかし、認知症を患っている場合は、遺言能力があることを証明する書類を揃えてから作成しなければ、のちに無効と判断されてしまう可能性があるため注意が必要です。

遺言者が認知症を患っていた場合、医師に遺言能力があると診断してもらったうえで公正証書遺言を作成することがおすすめです。また、遺言書作成の様子を映した動画や日記を残しておくと、遺言能力があることの証明に役立ちます。

しかし、さまざまな対策を講じて作成された遺言書でも、その有効性を巡って多くの揉め事が起こっていることを考えると、認知症が発症する前に遺言書を作成しておいた方がよいでしょう。

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