終活は独身の人こそするべき、大切な活動です。独身で身寄りがない人は、自分には終活なんて必要ないと思われるかもしれませんが、そんなことはありません。終活は、残りの人生を楽しく謳歌するための、前向きな準備のことです。
独身の人が終活をすると、老後の不安を解消できて、万が一、病気や突然の死を迎えたときに、親戚や友人知人の負担を軽減できます。自分の築いてきた大切な財産を、望む人に贈れるのも大きなメリットです。今回は、終活を独身の人もした方がいい理由3つとポイントをご紹介します。独身の人の終活は何が違うのか、身寄りがない人も安心の終活方法についてもご解説するので、ご参考にしてください。
終活を独身の人もした方がいい理由3つとポイント【身寄りがない人も安心】
独身の人の終活は何が違う?
独身の人と結婚している人(配偶者や子どもがいる人)がする終活の違いは、自分で多くのことを決断して、早めに進めておかなければならないことです。配偶者や子どもがいれば、自分が病気になったときや、亡くなったときの介護や手続きを一任できます。
しかし、独身で身寄りがない場合は、遠い親戚や友人知人、公的サービスに従事する人などに頼らざるをえなくなり、多くの他人に負担をかけてしまいます。
独身であるのは決して悪いことではなく、困ったときはお互い様なので、人に頼ったりお世話になったりするのは、当たり前のことかもしれません。ただ、家族と違って他人にお世話になる場合は、お互いに意思疎通をしたり、判断してもらったりするのが難しくなります。
終活を進めておかないと、財産相続や介護、遺品整理、葬儀など、さまざまな問題が生じてしまうのです。独身の人は、いつ自分に何かあってもいいように、早めに終活に取り組むのがおすすめです。
終活に取り組むことで、「老後は、誰が面倒をみてくれるんだろう」「自宅で急に倒れてしまったとき、どうなるんだろう」といった不安から、開放されるようになります。
終活を独身の人もした方がいい理由3つ
独身で身寄りがない人でも、完全に孤立無縁な人はいません。終活をすると、自分だけでなく周りの人の心配も軽減できるのがメリットです。終活を独身の人もした方がいい理由3つをご紹介します。
老後や死の不安を解消できる
家族がいれば、老後はみんなが面倒をみてくれるだろうと危機感が薄れるものですが、独身の場合は誰が面倒をみてくれるんだろう、と不安になりますよね。
病気や介護の問題だけでなく、飼っているペットのお世話や孤独死のリスクなど、独身であるからこそのお悩みもあると思います。終活を始めると、自分が亡くなった後のことだけでなく、老後生活中に起きるかもしれないさまざまな問題に、事前に備えられます。
老人ホームの事前契約をしておいたり、将来ペットのお世話をお願いできる人を探しておいたり、終活で未然に対処できる問題はたくさんあります。何より、一人で漠然と老後や死の不安を抱えながら生活するのは、とても辛いことです。
独身でも早めに終活に取り組んでおけば、老後や死の不安を解消できて、日々を快活に楽しむことができます。
親戚や友人知人の負担を軽減できる
身寄りがない場合、老後や死後の身の回りのことは、遠い親戚や友人知人が担当することになるかもしれません。独身で長い間一人暮らしをしていると、自分のことは本人にしかわからず、周りの人に大きな負担をかけてしまう可能性があります。
例
- 突然入院することになり生前整理を友人に頼んだが、不用品の判断が難しく進まない
- 認知症が進行し介護施設に入ることになったが、他の持病などの情報が全くわからない
- 葬儀をしようとするが、費用を賄う財産が見つからない、宗派がわからない など
若くて健康でも、突然の病気や事故で入院する可能性は誰にでもあります。 終活の一環として、突然の緊急事態でも安心なお金を備えておくことや、頼れる人を事前に探しておくことは、周りの人の負担を軽減するために大切です。
自分の財産をどうしたいか決められる
独身で法的な被相続人(家族や親族)がいない場合、財産は国のものになってしまいます。財産には、現金だけでなく株式や投資信託、車や不動産、宝飾品なども含まれます。終活をして遺言書を作成しておけば、自分の望む人に相続できるのがメリット。
独身でも自分の財産を、望む人に相続してもらえます。ただし、遺言書は正しい形式で、法的効力を持つ内容にしなければいけません。弁護士や行政書士に依頼して遺言状を公正証書として認めてもらえれば、自分の財産をどうしたいか決めたとおりに、相続してもらえます。
終活を独身の人がするときのポイント
終活を独身の人がするときは、計画を立てて早めに取り組むことが大切です。
財産や葬儀、お墓などのことは自分で決めておかないと、周りの人では対処しにくい問題なので、元気なうちに準備や生前契約を進めておきましょう。終活を独身の人がするときのポイントを解説します。
生前整理と断捨離には早めに取り組む
生前整理や断捨離は、若いうちから早めに取り組むのがおすすめです。特に、身の回りの物が多い人や、コレクションの趣味などがある人は要注意。
生前整理や断捨離は意外と体力と気力を使うものなので、高齢になってから一人で取り組むのは難しくなってしまいます。業者に頼むこともできますが、費用がかかる上に、高く買い取ってもらうのは困難です。
若くて元気なうちであれば、自分でリサイクルショップに足を運んだり、フリマアプリを利用したりして、不用品やコレクションを効率的にお金に換えられます。また、生前整理や断捨離をすると、身も心もすっきりするのもメリット。
自分と向き合う良い機会にもなり、残りの人生を楽しむ活力が湧いてきます。
遺言書やエンディングノートは必ず書く
「家族がいないから、遺言書やエンディングノートは必要ない」
これは、大きな間違いです。
遺言書やエンディングノートは、独身の人こそ作成しておくべき重要なものです。まず、遺言書は自分の財産をどうするか、法的に定められる書類です。財産なんてないという人も、家や車、生活用品など、何かしらの所有物はあります。
遺言書がなければ財産となるものはすべて国のものになり、誰かに相続してもらうことはできません。身寄りがなくてもお世話になった人など、財産を相続してほしい人がいる場合は、必ず遺言書を作成しましょう。
次に、エンディングノートは、自分自身が作成することで、無くなった後の家族の負担を軽減し、遺産相続や葬儀などの手続きがスムーズに進むようにするためのものです。遺言書と違って法的効力は持ちませんが、その分、自由に内容をまとめられます。
エンディングノートに財産、老後生活、葬儀やお墓についてなどを書いておくと、万が一のことがあったときに、情報が役立つのがメリットです。最近はスマホやパソコンの中に残る財産やデータなどの、デジタル遺品の取り扱いも問題になっています。
デジタル遺品を整理した後、エンディングノートに各サービスのIDやパスワードなどを記載しておくと、残された人が処理しやすくおすすめです。
葬儀やお墓は生前契約しておく
独身の人は、葬儀やお墓の準備も自分で進めておかなくてはいけません。葬儀は事前に契約と支払いができるので、生前契約をしておけば自分に万が一のことがあっても、誰にも迷惑をかけることなく安心です。自分の望むプラン内容で、葬儀の契約ができるのもメリットです。
お墓は永代供養の手続きをしておけば、身寄りがなくても、納骨やお墓の管理を霊園や寺院がしてくれるのでおすすめ。
永代供養にもいろいろなスタイルがあります。代表的なスタイルをご紹介します。
屋内設置されたコインロッカーのような棚に、個別に骨壺を納めてもらう方法
遺骨に直接お参りをしてもらえます。お墓のように、遺族がお掃除をしにくる必要もありません。「霊廟スタイル」と呼ばれることもあります。
屋外での合葬墓
モニュメントのような碑や塔の下に納骨堂があり、他の人と一緒にまとめて納骨されるスタイルです。
屋外での個別墓
一般のお墓のイメージに近く、1人ずつの墓石を設置するスタイルです。費用が高くなりがちですが、個別に埋葬してもらいたい方に向いています。
注意したいのは、永代といっても永遠という意味ではなく「33回忌まで」「50回忌まで」など期限があることがほとんどであるということです。期限を過ぎた遺骨は、他の遺骨とともに合祀されます。永代供養の期間はいつまでか、永代供養の期間を過ぎたらどうなるのかも確認しておきましょう。
ご先祖様が眠るお墓に入る予定の人も、独身で継承する家族や子どもがいない場合は、永代供養墓への改葬による「墓じまい」の手続きをしておくようにしましょう。
福祉制度について知っておく
公的な福祉制度を知っておけば、将来困ったことがあって、一人で解決できそうにないときも安心です。
例えば、介護の相談ができる「地域包括支援センター」や、介護費用の一部を給付してもらえる「介護保険制度」、地域住民の福祉の相談に乗ってくれる「民生委員」などが挙げられます。
どんな福祉制度があって、利用できるかは、自治体によっても異なります。不安なことがあれば、終活の専門家か自治体の対応窓口に、気軽に相談してみるのがおすすめです。
任意後見制度の手続きをしておく
任意後見制度とは、認知症などで判断能力が低下したときに、財産の管理や医療・介護サービスの事務手続きをしてくれる人を指定できる制度です。任意後見制度は、家族や親戚以外の人にも依頼できます。
信頼できる友人や知人にお願いできるので、独身の人には最適な制度です。任意後見制度の手続きをしておけば、遠い親戚に勝手に財産を使われたり、医療や介護サービスを利用するときに、困ったりする心配がなくなり安心できます。
地域の人とコミュニケーションを取っておく
独身の人は、日頃から地域の人とコミュニケーションを取っておくことも大切です。若いときはあまり現実味がないかもしれませんが、高齢者の孤独死は年々増加しています。自宅や近所で急に倒れたとき、地域の人と交流があればすぐに異変に気づいてもらえたり、助けてもらえたりする可能性が高くなります。
地域の人との交流は、老後の人生を謳歌するために良い影響をもたらすことも。万が一に備えて、若いうちから周りの人とのコミュニケーションを円滑に保っておくことが、独身の人にとっては重要なポイントになります。
終活は独身の人の不安を解消してくれる前向きな活動(まとめ)
終活は、老後や死の不安を解消してくれたり、独身の人の財産相続問題を事前に解決してくれたりする、意味のある活動です。独身の人は家族がいないからと、終活に消極的な傾向があります。しかし、頼れる家族がいないからこそ、終活の役割は大きくなります。
医療や介護を誰に任せるのか、葬儀の執り行いやお墓の管理はどうするのか、終活として任意後見制度の手続きや生前契約をしておくことで、心配事がなくなります。友人や知人に負担をかけるリスクがなくなるのも、大きなメリットです。
独身の人が終活をするときは、なるべく早く元気なうちに取り組むのがポイント。
老後の人生をのびのびと一人で謳歌するためにも、断捨離やエンディングノートの作成など、取り組みやすいことから始めてみてくださいね。
今日のポイント
- 終活は独身の人が残りの人生を楽しく謳歌するための前向きな準備
- 終活を独身の人もした方がいい理由は、「老後や死の不安を解消できること」「友人や知人の負担を軽減できること」「自分の財産をどうしたいか決められること」
- 終活を独身の人がするときのポイントは、早めに必要な手続きに取り組み、万が一に備えて地域の人としっかりコミュニケーションを取っておくこと
【監修】池原充子(終活専門相談員)
これまでの略歴
身元保証 課程修了
エンディングノート講師 課程修了
遺言作成講師 課程修了
認知症サポーター 課程修了
兵庫県尼崎市出身
京都外国語大学中国語学科卒
これまでの略歴
身元保証 課程修了
エンディングノート講師 課程修了
遺言作成講師 課程修了
認知症サポーター 課程修了
兵庫県尼崎市出身
京都外国語大学中国語学科卒