お墓を守る人がいない人も安心できる4つの解決策

従来、お墓は先祖代々の祭祀財産として承継者である家族が守っていくものでした。しかし最近では、お墓を守る人がいない家が増えてきています。少子化により家を継ぐ子どもがいない家庭が増えたこと、ライフスタイルの変化により実家を遠く離れて暮らす子世代が増えたことなどが原因です。

その一方で、「お墓を守る人がいない」と困る人のニーズを満たせるよう、多様なお墓の形が生まれています。この記事では、お墓を守る人がいない家庭に向けて、樹木葬、納骨堂、合祀墓、散骨の4つの方法をご提案します。なお、先祖のお墓をたたむ「墓じまい」についても、合わせて解説します。

お墓を守る人がいないとしても、さまざまな選択肢がある

お墓を守る人がいない人も安心できる4つの解決策01

「お墓を守る人がいない」と心配している人は多くいます。全国石製品協同組合(以下 全石協)が2022年に行ったアンケート調査によると、お墓を所有している人の心配事で一番多かったのが「お墓を維持すること」(42.8%)でした。

また、2023年に総務省が行った調査によると、公営墓地・納骨堂で、死亡者の縁故者がいない無縁墓が発生している自治体は58.2%に上ります。無縁墓は長時間にわたり適切な管理がされないため、近隣の使用者とのトラブルとなりかねない状態に陥っています。

プレスリリース:「老後のお墓についての心配事」についてのアンケート調査(全国石製品協同組合、2023年1月18日)

出典:墓地行政に関する調査-公営墓地における無縁墳墓を中心として-(総務省)

しかしその一方で、お墓の選択肢は増えています。お墓を守る人を必要とする承継墓ばかりを扱っていては、ニーズになかなか応えられないためです。

承継者の代わりに霊園の管理者が供養や管理を行う永代供養の形をとるお墓が豊富になり、また人気を博しています。どんな種類の永代供養があるか、そしてお墓を持たない究極の形としての散骨について、順に解説します。

まずは墓じまいを検討しよう

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先祖代々のお墓がある人は、今後どんなお墓がよいか考える前に、まずは今あるお墓をたたむ「墓じまい」を検討しなければなりません。墓じまいは、墓石を撤去して更地にし、霊園の管理者に墓地を返還するものです。勝手に工事をしてはならず、霊園やお寺の了解を得た上で行います。

墓じまいを検討するなら、まず今あるお墓の管理者に相談しましょう。承継者がいないために墓地を返還することを考えていると切り出せば、方法について詳しく教えてくれます。

なお、墓じまいをしたお墓から遺骨を取り出し他の場所に埋葬するときは、自治体に改葬許可申請を行う必要があります。ただし、遺骨をそれまでお世話になった霊園やお寺の合祀墓へ移動させるなら改葬許可は必要ありません。

解決策①樹木葬なら基本的に永代供養が叶う

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樹木葬とは、墓石ではなく樹木を参拝の対象とするお墓の形です。桜やクスノキなどの大樹の周りに、たくさんの遺骨を納める集合墓形式が一般的な形ですが、1つの区画に1本の中低木を植える個人墓形式もあります。

樹木葬の多くは、承継者のいらない永代供養です。また集合墓形式の樹木葬は専有区画が小さいため安価であり、なるべく費用を押さえたい人にとっても魅力的といえます。ただ、承継者を立てるタイプの樹木葬もまれにあるため、契約形態をよく確認しましょう。

なお、樹木葬は墓石をあまり使わず、自然の中で眠れるイメージから「お墓がいらない人のための埋葬法」と言われることもありますが、墓地として許可を受けた場所につくられるため、れっきとしたお墓です。

解決策②永代供養型の納骨堂を選ぶ

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納骨堂とは、複数の遺骨を収蔵する屋内施設のことです。ロッカーや小型仏壇などの形で、個別のスペースが設けられます。建物内でお参りをするため、雨に濡れることなく、区画内の雑草を抜くなどの清掃をする必要はありません。

納骨堂は契約時に使用料を支払い、以後は年間管理費を支払い続ける形が一般的でした。しかし近年では、永代供養型の納骨堂が増えています。永代供養型の納骨堂では、5年や10年といった使用期限を決め、使用料と使用期限までの管理費を契約時に一括で支払います。よって承継者が管理費用を支払う必要はありません。

使用期限が訪れたら、遺骨は個別のスペースから取り出され、納骨堂内外にある合祀墓へ他の人の遺骨と一緒に合祀されます。

解決策③みんなと一緒に眠れて安価な合祀墓

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合祀墓とは、たくさんの人の遺骨と一緒に埋葬される大きなお墓です。「供養塔」や「永代供養墓」と呼ばれることもあります。合祀墓の清掃や供養は、基本的に霊園や寺院側が行うため、合祀墓は全て永代供養です。

合祀墓の特徴は安価なことです。相場は骨壺1つにつき10万円から30万円ほどで、平均して200万円ほどがかかる承継墓とはかなりの違いがあります。ただ、先祖の遺骨を全て合祀する場合など、骨壺が大量であればそれなりの費用になります。

なお、合祀墓に葬られると後で個別に遺骨を取り出すことができないため、注意しましょう。

解決策④お墓に入りたくない人におすすめな散骨

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これまでご紹介してきた樹木葬、納骨堂、合祀墓は、いずれも「お墓」の一種です。お墓という概念にとらわれず、大いなる自然に戻っていきたいと考える人には、散骨がおすすめです。お墓ではないので、当然ながら承継者は必要ありません。

散骨とは、海や陸地にパウダー状の遺灰を撒いて弔いとすることです。海へ遺灰を撒く海洋散骨を行う事業者が、全国各地でサービスを展開しています。気になるようなら、希望のエリアで散骨を行っている事業者がないか調べてみましょう。

【まとめ】4つの選択肢から家族と自分に適したものを見つけて

樹木葬、納骨堂、合祀墓、散骨と、4つの選択肢をご紹介しました。自然に囲まれたいなら樹木葬、お墓参りを楽にしたいなら納骨堂、費用を抑えたいなら合祀墓など、それぞれの特徴を比較して、自分や家族の希望に沿ったものを選びましょう。

なお、墓じまいを終えてから次のお墓について考えるという方法もとれます。いったん先祖の遺骨を自宅に引き受け、手元供養を行いながらじっくり納骨先を探すことが可能です。気になった霊園があったら見学に行くなどして、納得のゆくお墓選びを行いましょう。

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【監修】奥山晶子(終活カウンセラー、FP(2級))

奥山晶子

これまでの略歴

葬儀業界を経験した後、出版社勤務を経て終活全般のライターへ。2012年より2年間「葬送の自由をすすめる会」理事。終活カウンセラー、FP(2級)。近著に『ゆる終活のための 親にかけたい55の言葉』(オークラ出版)がある

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