死後事務委任契約のトラブルを防ぐ3つの方法【対処法を詳しくご解説】

死後事務委任契約は、亡くなった後に必要な手続きや、葬儀の執り行いなどを人に依頼する重要な契約です。頼れる家族や親戚がいない場合は友人や知人、司法書士などの専門家に依頼できますが、実はトラブルが多く報告されています。

死後事務委任契約で多いトラブルは、親族の反対や二重契約の発覚などです。契約内容を明確にして適切な形で準備しておかないと、効力を発揮できないこともあります。自分が亡くなった後に残された人たちが、困ったり揉めたりする事態は、何としてでも避けたいものです。今回は、死後事務委任契約のトラブルを防ぐ3つの方法をご紹介します。死後事務委任契約と一緒に進めておくと安心な手続きもご解説するので、ご参考にしてください。

死後事務委任契約の基本

死後事務委任契約のトラブルを防ぐ3つの方法【対処法を詳しくご解説】01

死後事務委任契約とは、自分が亡くなった後の手続きを、生前のうちに特定の誰かにお願いする契約のことです。通常であれば、人が亡くなった後の手続きは相続人にあたる家族や親戚が行います。しかし、身寄りのない人や頼れる家族や親戚がいない人の場合は、自分の死後の手続きを誰かに依頼しておくことをお勧めします。

後事務委任契約の契約方法に決まりはないため、書面を交わさず口頭契約でも成立します。契約内容も自由ですが、死亡届の提出や葬儀の手続きなどを依頼するのが一般的です。

生前の支払いや保険の契約などが残っていた場合は、本人の財産から清算をしてもらうこともあります。ただし、死後事務委任契約では相続に関することの依頼はできません。

財産継承について書けるのは遺言書だけで、その他の書面や契約では効力を持たないため要注意です。

死後事務委任契約でよくあるトラブル

死後事務委任契約のよくあるトラブルを把握しておくと、対処法がわかります。死後事務委任契約でよくあるトラブルをご紹介します。

契約内容について親族の意見が合わず揉める

親族が複数人いる場合、死後事務委任契約の内容について「私は以前こうだと聞いていた」「この要求は受け入れ難い」など、意見が合わずに揉めることがあります。特に、葬儀のプランや納骨の形態、遺品整理のやり方などは親族間で意見が割れやすい内容です。

また、親族がいるのに第三者に死後事務委任契約を依頼した場合、以下のようなトラブルが想定されます。

  • 死後事務委任契約の費用を払うことに親族が否定的になる
  • 死後事務委任契約を結んでいることを親族が知らずに驚き、本当に契約があったのかどうかで揉める

死後事務委任契約を司法書士などの専門家や民間サービスに依頼すると、費用がかかります。 死後事務委任契約を依頼する場合の平均費用は40〜50万円と高額なため、相続人となる親族がいる場合は反対を受ける可能性があります。 費用を支払った分、遺産の財産額が減ってしまうからです。

また、第三者と死後事務委任契約を結んでいることを親族に伝えていなかった場合、驚かれて依頼を引き受けてくれた人と、本当に契約があったのかどうかで揉めることもあります。

亡くなった後に二重契約が発覚する

死後事務委任契約と受け取れる内容を複数人に話していたことで、二重契約となってしまうトラブルです。死後事務委任契約は口頭契約でも成立するため、「私が死後の手続きを任された」と主張する人が複数人発生する可能性があります。

そうなると、どの契約が正式なものか判断できず、死後の手続きや葬儀の執り行いが滞ってしまいます。また、認知症による死後事務委任契約の二重契約パターンもあります。

認知症を発症した人が複数の人に死後事務委任契約を依頼していたり、報酬を支払っていたりすると、誰が依頼を実行するべきかわからなくなってしまいます。

死後事務委任契約のトラブルを防ぐ3つの方法

死後事務委任契約は亡くなった後に内容を実行されるため、トラブルを防ぐためには事前に対策をしておく必要があります。残された人たちが争わずに済むように、契約方法は慎重に選びましょう。死後事務委任契約のトラブルを防ぐ3つの方法をご紹介します。

1.口頭ではなく書面で契約する

口頭契約は、契約したことを証明できるものが何もないため、あらゆるトラブルの要因となります。死後事務を任せたい人がいて、内容も必ず希望通りに遂行してほしい場合は、必ず書面契約にするようにしましょう。また、口頭契約には誰でも「契約していた」と主張ができる危険性もあります。

例えば、Aさんに死後事務委任契約を依頼していたとしても、Bさんが「私が契約をしていた」と主張した場合、口頭契約ではどちらが事実なのか第三者は判断できません。

不正な主張や親族間の揉めごとを防ぐためにも、口頭契約で済まさないことが大切です。

2.公正証書として作成する

公正証書とは、公証人が作成する公文書です。死後事務委任契約を公正証書として作成すると、内容に法的効力が発生します。契約の成立も明確になるため、二重契約などあらゆるトラブルを防ぐのに有効です。

死後事務委任契約を公正証書として作成するには、公証役場で内容の承認を受ける必要があります。内委任者(依頼する人)と受任者(依頼された人)で公証役場に必要書類を持って行き、死後事務委任契約の内容を提出。内容に問題がなければ公証人が公正証書を作成し、正本・謄本が交付されます。

公正証書の作成には約1万円前後の費用がかかりますが、死後事務委任契約に法的効力を持たせられる大きなメリットがあります。

3.親族に知らせておく

親族がいる場合は、誰にどんな内容で死後事務委任契約を結んだのか、知らせておくようにしましょう。可能であれば、死後事務委任契約を結ぶ前に相談できると、トラブルが起こりにくく安心です。疎遠の親族であっても、血の繋がりがあれば相続人に該当する可能性があります。

自分が亡くなった後に、周りの人たちが揉めることのないように配慮が大切です。親族がいない場合は友人や知人、医療や介護施設の人に知らせておきましょう。特に、専門家や民間のサービスに依頼をした場合は費用も発生するため、周りの人たちの納得と把握の上で契約をすることが重要です。

死後事務委任契約と一緒に進めておくと安心な手続き

死後事務委任契約は、原則として「亡くなった後の手続き」をしてもらうためのものです。生前の手続きや相続に関することなどの依頼は、できないので気をつけましょう。死後事務委任契約と一緒に進めておくと安心な手続きをご紹介します。

遺言書の作成

遺言書は、財産継承を誰にするのかを指定するための書面です。死後事務委任契約では財産継承について契約できない(書いても無効)ため、遺産がある場合は遺言書の作成も必須となります。遺言執行者と死後事務委任契約を依頼した人を同じ人にすれば、その人は死後事務から相続手続きまで行えます。

財産管理委任契約

財産管理委任契約とは、生前の財産の管理や生活上の事務などを誰かに委任する契約のことです。

判断能力の低下がなくても依頼できるため、高齢や病気などによって、自分で財産管理や生活上の手続きをするのが難しくなった人におすすめです。死後事務委任契約は亡くなった後の手続き、財産管理委任契約は生前の財産管理と生活上の事務を行う違いがあります。

任意後見契約

任意後見契約とは、将来の判断能力の低下(認知症発症など)したときに備えて、後見人を依頼する契約のことです。

後見人は判断能力が低下した人に代わって、財産の管理や法律行為の手続きなどを行う役割があります。任意後見契約と財産管理委任契約の違いは、契約内容を実行する時期です。

任意後見契約は判断能力が低下してから契約内容が実行されますが、財産管理委任契約は契約をした時点からいつでも財産管理や生活上の事務手続きをしてもらえます。今は自分で財産管理や生活上の手続きを行えるけれど、将来が不安な人は任意後見契約。

判断能力の低下はないけれど、今からすぐに財産管理や生活上の手続きを委任したい人は、財産管理委任契約がおすすめです。

尊厳死宣言

尊厳死宣言とは、将来、病気が治る見込みがなく、死期が迫った場合に、延命治療を行わないことを希望する宣言です。自分の意思で自然な死を迎えたいと考える人に適しています。尊厳死宣言は、公正証書として作成します。

公正証書以外で作成すると作っても法的な効力はない、意味がなくなってしまうので気をつけましょう。

身元保証契約

身元保証契約とは、病院や介護施設などに入院・入居するときに身元を保証してくれる契約のことです。ほとんどの病院や介護施設では、入院・入居時に身元保証人が求められます。

特に高齢者の場合は絶対条件であることが多く、身元保証人がいないと望む病院や介護施設に入れないケースがあるのが現実です。身元保証人は家族や親族がなるのが一般的ですが、高齢や疎遠を理由に頼れないことがあります。

そんなときに役立つのが身元保証契約で、独りきりの方でも費用を支払えば、民間のサービスが身元保証人となってくれる契約が可能です。身元保証人はただ身元を保証するだけでなく、生活上の手続きなども行ってくれるメリットがあります。独りきりの方でも安心な契約制度です。

死後事務委任契約でよくあるトラブルを知って未然に防ごう(まとめ)

死後事務委任契約は生前に自分で依頼するものですが、亡くなった後のことを考えると周りの人たちへの配慮が必要となります。親族がいても死後事務委任契約を友人や知人、専門家やサービスに依頼することは可能です。

ただし、相続人の権利もあるため、依頼する人や契約内容は慎重に考えなくてはいけません。死後事務委任契約の内容を必ず実行してほしい場合は、口頭契約ではなく書面契約にすること。そして、できれば公正証書として作成することです。

死後事務委任契約は亡くなった後の手続きが前提なため、生前の財産管理や生活上の手続きなどを委任したい場合は、合わせて財産管理委任契約や任意後見契約を結んでおくと安心です。

今日のポイント

  1. 死後事務委任契約でよくあるトラブルは契約内容で親族が揉めたり二重契約が発覚したりすること
  2. 死後事務委任契約のトラブルを防ぐ3つの方法は「書面契約をすること」「公正証書を作成すること」「親族に知らせておくこと」
  3. 死後事務委任契約と一緒に進めておくと安心な手続きには、遺言書、財産管理委任契約、任意後見契約、尊厳死宣言、身元保証契約などがある

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【監修】池原充子(終活専門相談員)

池原充子

これまでの略歴

身元保証 課程修了
エンディングノート講師 課程修了
遺言作成講師 課程修了
認知症サポーター 課程修了

兵庫県尼崎市出身
京都外国語大学中国語学科卒

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